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冬の加湿、本当に必要? インフルエンザ対策の「常識」と、家の「健康」を守る新しい考え方

インフルエンザ対策の「常識」と、家の「健康」を守る新しい考え方

冬の夜のリビングで、スチーム式加湿器を2台稼働させ、湿度70%を超えた状態をイメージした写真風イラストです。大きな窓ガラスにはびっしりと結露がつき、サッシの角には黒カビが出始めています。テーブルの温湿度計を見つめる日本人の母親と子どもは、健康のために加湿をがんばってきた一方で、「もしかしてやりすぎかも」と不安を感じている様子です。インフルエンザ対策としての加湿が、結露やカビを招いてしまう“過加湿”のリスクを伝えるためのビジュアルとして使えます。

家族の健康を思って加湿をがんばりすぎた結果、窓一面が結露し、カビが心配になる冬のリビングのイメージです。

こんにちは。

福岡のビオハウジング、健康オタクの住宅設計士、竹森哲也です。

冬になると、

  • 肌がカサカサする

  • 喉がイガイガする

  • 子どもが風邪をひかないか心配

そんな不安から、つい「とにかく加湿器をフル稼働!」となりがちですよね。

テレビでもよく

「インフルエンザ予防には湿度50〜60%が大事です」

と言われますが、実はこれ、「家の健康」や「家計」から見ると、ちょっと注意が必要な常識でもあります。

今回は、

「冬の加湿、本当にどこまで必要?」

というテーマを、

  1. インフルエンザ予防の本当の主役

  2. 世界から見た“湿気”の位置づけ

  3. 加湿にかかるお金とエネルギー

  4. それでも加湿したいときの“賢い方法”

の4つの視点から、やさしくほどいていきます。


1. インフルエンザ予防、「加湿」は最強の武器ではない?

よく言われるのが、

「乾燥するとウイルスが元気になるから、加湿しなさい」

というフレーズ。

たしかに「極端な乾燥」は、ウイルスにとって有利な環境です。

ただ、実際に私たちがインフルエンザにかかる主なルートは、

  • 飛沫(ひまつ)感染

    • 咳やくしゃみを直接浴びること

  • 接触感染

    • ウイルスがついた手で、目・鼻・口を触ること

この2つが圧倒的に多いと考えられています。

つまり、

  • 部屋の湿度を一生懸命上げる(空気対策)

よりも、

  • マスクをする

  • こまめに手を洗う

  • 人混みを避ける

といった基本的な対策の方が、ずっと予防効果が高いということです。

「加湿さえしていれば安心」ではなく、

「加湿はあくまで補助的な存在」

くらいに考えておくのが、本当はちょうどいいバランスです。


2. 日本は「乾燥」を怖がるけれど、世界は「湿気」を怖がっている

日本では、

「しっとり=お肌にいい」「潤い=正義」

というイメージが強く、

「乾燥は悪、湿気は善」という感覚になりがちです。

でも、世界基準(WHOなどの考え方)で見てみると、

室内の過剰な湿気は“汚染”の一種

として扱われます。

  • 無理に湿度を上げる

  • 窓や壁の裏側で「結露」が起きる

  • そこからカビが発生する

この流れは、

  • 喘息

  • アレルギー

  • 慢性的な咳

などの原因になることがわかってきています。

インフルエンザを防ごうとして湿度を上げすぎた結果、

「カビと戦うことになってしまった」

というのでは、本末転倒ですよね。

世界の視点では、

  • 「湿度を上げること」よりも

  • 「湿度をコントロールしてカビを防ぐこと」

の方が、健康にとってずっと大事だと考えられています。


3. 知って驚く! 加湿にかかる「お金」と「エネルギー」

ここが、おそらく一番「えっ?」となる部分かもしれません。

● 暖房よりも“加湿”の方が、エネルギーを食う

  • 空気を温める(暖房):

    → 実はそこまで莫大なエネルギーではない

  • 水を蒸発させる(加湿):

    → 「液体を水蒸気に変える」のに、ものすごいエネルギーが必要

やかんでお湯をずっと沸かし続けるイメージに近いです。

● しっかり湿度60%をキープしようとすると…

ある試算では、一般的な戸建て住宅で、冬場に湿度60%をしっかり保とうとすると、

  • 水の量

    → 1日に約33リットル

    (大きなポリタンク1.5本〜2本分!)を、空気中に撒いている計算に。

  • 電気代

    → スチーム式加湿器をフル稼働すると、

    月に2万円近くかかるケースも。

「家族の健康のために」と思って加湿していたら、

  • 電気代がどんどん上がる

  • その水分が窓や壁の裏で結露になり、カビの原因になる

という、体にも家にも家計にもツラい状態になっている可能性があります。


4. それでも加湿したいなら、「家全体」で考えよう

とはいえ、

  • 喉のイガイガがつらい

  • 子どもの肌荒れが気になる

という声も、よくわかります。

「じゃあ加湿を全部やめましょう」とは言いません。

そのかわり、

「加湿器をガンガン焚く前に、家の“しくみ”を見直してみませんか?」

という提案をしたいのです。


4-1. 家の中にある「水分」を捨てない(全熱交換換気)

24時間換気には、

  • 熱だけを回収する「顕熱交換」

  • 熱+湿気を回収する「全熱交換」

があります。

全熱交換型の換気システムを使うと、

  • 汚れた空気を外に出すとき、

  • その中に含まれる「湿気」と「熱」をある程度回収して、

  • 新しく入ってくる空気にバトンタッチする

ことができます。

この仕組みがあると、

  • せっかく家の中で生まれた“潤い”を、外に捨てにくくなる

  • 「加湿器なしでも、そこそこ湿度が保てる」状態に近づく

ので、加湿器に頼りきりにならずに済みます。


4-2. 「生活で出る水分」を味方につける(生活発湿)

実は、日常生活の中だけでもかなりの水分が出ています。

  • お風呂

  • 料理(煮込み・お湯を沸かすなど)

  • 洗濯物の部屋干し

  • そして、人の呼吸・汗

これらをうまく使うだけでも、立派な「自然の加湿」になります。

例:

  • お風呂あがりに、しばらく浴室のドアを少し開けておく

  • 冬場は、あえて洗濯物を室内干しするスペースを作る

など、「生活の延長」でできる工夫だけでも、

加湿器の出番をかなり減らせます。


4-3. そもそも「寒くない家」にする(断熱の力)

もうひとつ大事なのが、

「断熱性能を上げて、家そのものを“冷やさない器”にすること」

です。

  • 断熱性能が高い家

    → 壁や窓の表面温度が下がりにくい

    → 結露しにくい

    → 安心して、ほどよい加湿ができる

  • 断熱性能が低い家

    → 壁や窓がキンキンに冷える

    → 加湿した水分が、すぐ窓や壁の裏で結露になる

    → カビの温床になってしまう

「どれだけ加湿するか」だけでなく、

「その湿気を、家がちゃんと受け止められるか?」

という視点が、とても大切になってきます。


5. ビオハウジング的「賢い冬の過ごし方」

ここまでの話を、暮らしの視点でまとめるとこんな感じです。

  • インフルエンザ対策は、「手洗い・マスク」が主役。

    加湿は補助的と考え、過信しすぎない。

  • 「湿度の上げすぎ」はカビのリスク。

    WHO的には「湿気は汚染の一つ」という視点もあることを、頭の片隅に置いておく。

  • 加湿器に頼りすぎず、「生活の湿気」を上手に生かす。

    料理・お風呂・洗濯物干しなどを味方に。

  • 加湿器を使うなら、とにかく清潔第一。

    タンクの水は毎日替える。

    汚れた水は「お部屋中に雑菌ミストを撒いている」ようなものになってしまいます。

  • 「湿度計の数字」より、「結露の有無」と「空気の清潔さ」を大事に。

    多少40〜45%でも、カビのないきれいな空気で過ごす方が、トータルでは健康的なことも多いです。


おわりに

冬の室内環境って、「正解」がひとつではありません。

体質や家の性能、暮らし方によっても、ちょうど良いバランスは変わります。

ビオハウジングとしては、

「インフルエンザが怖いから、とにかく湿度60%!」

ではなく、

「手洗い・マスク+ほどよい湿度+カビを育てない家」

という、少し落ち着いた視点で冬の暮らしを見つめ直していただけたらいいなと思っています。

家づくりのご相談の際には、

  • 今のお住まいでの冬の困りごと

  • 加湿器や結露の悩み

  • 子どものアレルギーや肌荒れの心配

なども、遠慮なくお聞かせください。

「空気」と「家の器」の両方から、一緒に考えていけたら嬉しいです。

よくあるご質問|冬の加湿とインフルエンザ対策

Q1. 冬はどのくらい加湿すれば良いですか?

A.

一般的には「室内湿度40〜60%」と言われますが、数字だけを追いかける必要はありません。

極端な乾燥(30%以下)が続くと喉や肌がつらくなり、風邪もひきやすくなりますが、だからといって「常に60%をキープしなければいけない」というわけではありません。

  • 目安は「40〜50%台くらい」

  • 結露がひどく出るなら、湿度を少し下げる

  • 体感的に「喉が痛くない・肌がそこまでつらくない」ラインを探る

といった、“数字+自分のからだの感覚”の両方で見るのがおすすめです。


Q2. インフルエンザ予防に、湿度はどれくらい効果がありますか?

A.

「乾燥するとウイルスが元気になる」というのは一部正しいのですが、実際に私たちがインフルエンザにかかるルートとして多いのは、

  • 咳やくしゃみを直接浴びる 飛沫感染

  • ウイルスがついた手で目・鼻・口を触る 接触感染

の2つだと考えられています。

つまり、インフルエンザ予防の主役は、

  • マスク

  • 手洗い

  • 人混みを避ける

といった基本的な行動であり、加湿はあくまで**「サポート役」**です。

湿度だけでインフルエンザを防ごうとするのではなく、「手洗い・マスク+ほどよい加湿」のセットで考えるのが現実的です。


Q3. 加湿しすぎると、どんなリスクがありますか?

A.

湿度を上げすぎると、次のようなリスクが出てきます。

  • 窓や壁の中で結露が起きる

  • 結露が続くと カビが発生しやすくなる

  • カビは、喘息やアレルギー、慢性的な咳の原因になることも

世界的な基準では、「過剰な湿気」は室内環境の“汚染要因”の一つとされています。

「乾燥が怖いから」といって湿度を上げ続けた結果、カビと戦うことになってしまっては本末転倒です。

  • ほんのり潤う

  • 結露がひどく出ない

このあたりのバランスを探ることが、健康と家の寿命の両方にとって大事になってきます。


Q4. 加湿器に頼らずに、室内の湿度を保つことはできますか?

A.

はい、日常生活の中の「生活の湿気」を味方にすると、加湿器の出番をかなり減らせます。

たとえば、

  • お風呂上がりに、浴室のドアをしばらく少し開けておく

  • 冬場は洗濯物を室内で干すスペースをつくる

  • 煮込み料理やスープなど、湯気の出る調理を上手に取り入れる

などです。

さらに、全熱交換型の24時間換気が入っている家なら、

  • 排気する空気に含まれる「湿気」と「熱」を回収し

  • 新しく入ってくる外気にバトンタッチしてくれる

ので、「生活の湿気」をムダに捨てず、室内に活かしやすくなります。


Q5. 断熱性能と加湿には、どんな関係がありますか?

A.

断熱性能は、実は「どこまで安心して加湿できるか」に大きく関わっています。

  • 断熱性能が高い家

    • 壁や窓の表面温度が下がりにくい

    • つまり、結露しにくい

    • → ほどよい加湿をしても、カビになりにくい

  • 断熱性能が低い家

    • 窓や外壁が冷たくなりやすい

    • 加湿した水分が、そこで一気に結露

    • → カビ・腐朽の原因になりやすい

「何%まで加湿するか」だけでなく、

「その湿気を、家がちゃんと受け止められるか?」

という視点がとても大切です。

冬の快適さや健康を考えるなら、加湿器選びと同じくらい、家自体の断熱性能を整えることも一緒に考えていただきたいポイントです。

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