リネンカーテンを選ぶ理由|ポリエステルとの違いと静電気・ホコリの話
こんにちは、福岡のビオハウジング
健康オタクの住宅設計士、竹森哲也です。
家づくりのご相談を受けていると、意外と多いのがこんな声です。
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「カーテンって、正直“色と値段”で決めてました…」
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「静電気パチパチとホコリが、なんとなく気になる」
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「寝室や子ども部屋は、できるだけ“軽い空気”にしたい」
実は、カーテンの素材は「部屋の空気」を左右する大きな要素です。
とくにリネン(麻)は、静電気・ホコリ・光の質に大きく関わってきます。
この記事では、シリーズの第1回として、
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リネンカーテンを選ぶ機能的な理由
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リネンならではの「風合い」と心地よさ
にしぼってお話します。
ポリエステルとの違いを知ったうえで、
寝室や子ども部屋のカーテン選びのヒントになればうれしいです。
※防炎加工・形状記憶・アルデヒド系樹脂などの「薬剤の話」は、
第2回「カーテンの防炎加工と形状記憶の裏側」でくわしくお伝えします。リネンならではの「シワ感」と、光を柔らかく通す風合いが、窓辺に心地よい余白をつくってくれます。
リネンカーテンを選ぶ理由
―― ポリエステルとの違いと、静電気・ホコリの話 ――
1.リネンカーテンを選ぶ「機能的な」理由
まずは少しだけ理屈の話から。
リネンがポリエステルと違うのは、見た目だけではありません。
1-1 調湿してくれる布だから、空気が「重くなりにくい」
リネンは天然の麻。
繊維の中に小さな空洞を持っていて、
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空気中の水分を「吸ったり」
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逆に「吐き出したり」
しながら、まわりの湿度をゆるやかに調整してくれます。
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梅雨時期
→ 空気中の余分な湿気をいったん抱え込んでくれる -
冬の乾燥時期
→ ため込んだ水分を少しずつ戻してくれる
もちろん、除湿機や加湿器の代わりになるわけではありません。
それでも窓まわりの
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「なんとなく息苦しい」
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「ベタベタする/カラカラしすぎる」
といった感覚が少しやわらぐことで、
体へのストレスがマイルドになったと感じる方が多いです。
1-2 静電気が起きにくい=ホコリを引き寄せにくい
リネンのもうひとつの特徴が、静電気が起きにくいことです。
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ポリエステル
→ 「水分を吸いにくい」「乾きやすい」素材
→ 摩擦で帯電しやすく、静電気をため込みがち -
リネン
→ ある程度水分を含む
→ 電気が一点に溜まりにくく、静電気が起きにくい
静電気が起きると、空気中の
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ホコリ
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花粉
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ハウスダスト(ダニの死骸やフンなど)
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化学物質をまとった微粒子
を、磁石のように引き寄せてしまいます。
つまり、静電気の少ないリネンは、
「カーテンそのものがホコリの集積場所になりにくい」素材とも言えます。
1-3 光の通し方がやわらかい
同じ「レースカーテン」でも、素材によって光の質は変わります。
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ポリエステル
→ スッとまっすぐ光を通し、コントラストが強めになりやすい -
リネン
→ 繊維のムラと凹凸で、光を一度“こすって”から室内に届けるイメージ
その結果、
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影の輪郭がやわらかい
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白飛びしにくく、奥行きのある明るさになる
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朝の光が「まぶしい」から「気持ちいい」に近づきやすい
とくに寝室やリビングで、
**「明るいのに疲れない光」**を求める方には、
リネンのレースカーテンがよく合います。
2.リネンカーテンならではの「風合い」と心地よさ
機能だけでなく、感覚的な心地よさも、リネンの大きな魅力です。
2-1 光をやわらかく“こすって”くれる布
リネンの繊維は、太さも表面の凹凸もバラバラ。
そのおかげで、光が一度そこで散らされてから室内に入ってきます。
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南向きの大きな窓でも、
→ 「明るいのに、ギラギラしない」 -
影の輪郭がぼやっとやさしくなる
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写真を撮ると、背景の光がふんわりして見える
同じ窓・同じ方角でも、
リネンに変えると「光の質」が変わったように感じる方が多いです。
2-2 きっちりじゃない「シワ感」が、暮らしの余白になる
リネンカーテンは、どうしてもうっすらシワやたわみが出ます。
でも、その「完璧ではない感じ」が
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平日モードのピシッとしたスーツではなく
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休日に着るリネンシャツのような
**“力の抜けた心地よさ”**をつくってくれます。
形状記憶カーテンのように一糸乱れず揃ったヒダよりも、
少し不揃いな揺れの方が、視覚的な緊張をほどいてくれるのです。
家に帰ったとき、
「片付いているけれど、どこかゆるんでいる空気」
をつくるのに、リネンのシワ感はちょうどいい“ゆるさ”だと思います。
2-3 季節や湿度で変わる「表情の変化」
リネンは湿度を吸ったり吐いたりするため、天気や季節によって表情が変わります。
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雨の日
→ 少し重くなって、しっとり落ちるラインに -
カラッと晴れた日
→ 軽く、ふわりとふくらむ
同じカーテンなのに、
ドレープの出方が変わる=生き物のような表情があります。
それは裏を返せば、
室内の湿度や空気の状態を、
**さりげなく目で教えてくれる“センサー”**でもあります。
2-4 無垢材や植物とよく馴染む「マットな質感」
リネンの表面は、少しマットで落ち着いたツヤ。
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無垢のフローリング
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木のテーブルや椅子
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観葉植物
と並べると、お互いを引き立て合いながら、
**「ナチュラルだけど、どこか上質」**な雰囲気をつくってくれます。
ポリエステル特有のツルッとした光沢が
「ちょっとだけ安っぽく見えてしまう…」
と感じている方には、
リネンのやわらかな質感は、とてもしっくりくるはずです。
2-5 経年変化を「傷」ではなく「味」として受け止められる
年月とともに、リネンカーテンは少しずつ表情を変えていきます。
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ほんの少し色がやわらかく抜けていく
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手ざわりが、最初よりもくったりしてくる
これは、リネンカーテンが
家族の時間を一緒に刻んでいる証拠でもあります。
「ずっと新品のまま」でいる布よりも、
「一緒に年を重ねていく布」がいい。
そんな感覚を大事にしたい方には、
リネンカーテンはとても心強い相棒になってくれるはずです。
3.今回のまとめと、第2回「防炎加工・形状記憶」の予告
ここまでのお話を、いったん整理します。
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リネンカーテンは、
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調湿性
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静電気の起きにくさ
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やわらかな光の通し方
から、**「空気を整えるインテリア」**としてとても優秀。
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同じ窓・同じ光でも、
リネンに変えるだけで「光の質」や「部屋の空気感」が変わります。 -
シワや経年変化を「味」として受け止められる方にとって、
リネンは暮らしの余白をつくってくれる素材です。
次回の第2回では、今回あえて触れなかった
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防炎加工に使われる薬剤(難燃剤)の話
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形状記憶に使われるアルデヒド系樹脂の話
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それが室内のホコリや子どもの暮らしにどう関わるか
を、少し踏み込んで解説していきます。
「見た目」だけでなく、
「空気」と「からだ」にも目を向けたカーテン選び。
次の記事 https://biohousing.jp/spec_blog/curtain-flame-retardant-shape-memory/と合わせて、じっくり考えてみていただけたらうれしいです。
FAQ(人が読む用)
Q1. なぜリネンカーテンは静電気が起きにくいのですか?
A. リネンは天然繊維で、ある程度水分を含む性質があります。水分を抱え込める布は電気が一カ所に溜まりにくいため、ポリエステルに比べて静電気が起きにくく、ホコリや花粉を引き寄せにくいのが特徴です。
Q2. リネンカーテンはシワになりやすいと聞きますが、気になりませんか?
A. ポリエステルのようにピシッとは揃いませんが、うっすらとしたシワやたわみが、かえって「力の抜けた心地よさ」をつくってくれます。完璧な見た目よりも、リラックスした空気感を大切にしたい方には、このシワ感がむしろ魅力になります。
Q3. リネンとポリエステル、全部リネンにするのが理想ですか?
A. 予算やメンテナンス、日射コントロールを考えると、すべてをリネンにする必要はありません。寝室や子ども部屋など「空気の軽さ」を優先したい場所はリネン、外側の厚地カーテンや日射対策がメインの窓はポリエステル、といった役割分担がおすすめです。
Q4. 花粉症やアレルギーがある家族には、どんなカーテンが向いていますか?
A. 静電気が少なく、ホコリをため込みにくいリネンや綿麻のカーテンがおすすめです。すべてを変えるのが難しい場合でも、窓の室内側だけリネンレースにする、ポリエステルカーテンは洗濯や掃除機がけをこまめにするなどで、負担を減らすことができます。
Q5. リネンカーテンのメンテナンスは大変ですか?
A. 多くのリネンカーテンは、家庭用洗濯機の手洗いモードやドライクリーニングでお手入れできます。多少のシワは「風合い」として楽しめるので、アイロンがけも必須ではありません。定期的な洗濯と、日々の軽いホコリ落としで、長く気持ちよく使えます。
