庭のある家の「本当のメリット」と「見落としがちなデメリット」
導入:なぜ「庭のある家」に惹かれるのか
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「子どもを外で遊ばせたい」
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「家庭菜園や花づくりをしてみたい」
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「休日に庭でゆっくりコーヒーを飲みたい」
こうしたイメージは、多くの方が一度は思い描く「理想の暮らし」だと思います。
一方で、住み始めてから「こんなに手入れが大変だとは…」「虫が多くて外に出なくなった」という声があるのも事実です。
ここでは、庭のある家の**よいところ(メリット)と気をつけたい点(デメリット)**を整理しながら、
「自分たちに合う庭のつくり方」を考えていきます。

1.庭のある家のよいところ(メリット)
1-1. 心と身体が整う「小さな自然」
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緑を見るだけでストレスが下がりやすい
・窓の外に樹や草花が見えるだけで、目や脳が休まりやすくなる
・仕事や家事の合間に外を眺めることで、呼吸がふっとゆるむ -
外に一歩出るだけで“気分転換”ができる
・遠くに出かけなくても、数分の「庭散歩」で頭の切り替えがしやすい
・土や植物に触れることで、ほどよい疲れと満足感が得やすい
家のすぐそばに「ミニ公園」がくっついているようなもの。
忙しい日常の中で、“一息つける場所”を持てるのが大きなメリットです。
1-2. 子どもの感覚と非認知能力を育てる
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五感がフルに働く遊び場になる
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土の感触/葉っぱの香り/風や光の変化を全身で感じる
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季節ごとの虫・花・実との出会いが、自然への興味を育てる
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「自分で工夫する力」が育ちやすい
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石や枝、木の実を使って遊びを作る
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水まきや掃除を通して「お手伝い」「責任感」も身につく
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外遊びのハードルが下がる
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公園まで行く元気がない日も、玄関を一歩出れば遊び場
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親の目が届きやすく、安心して遊ばせやすい
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1-3. 暮らしの「余白」としての庭
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季節の行事や小さなイベントに使える
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プール遊び・お月見・流しそうめん・焚き火(条件付き)など
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友人や親族を招いたときの、第二のリビングとして
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室内との連続感で“広がり”を生む
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リビングからフラットにつながるウッドデッキ
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カーテンを開けた時の抜け感・開放感
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「外」と「内」のバッファーになる
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道路や隣家との距離を取り、心理的な余裕を生む
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直接窓の前が道路…という窮屈さを避けられる
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1-4. 空気環境・微生物環境としての庭
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風の通り道・光の入り方を調整しやすい
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庭の抜けで風が通り、家の中の“こもり感”を減らせる
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屋内と屋外の微生物のバランス
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過度に閉じた空間よりも、適度に外気とつながることで
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多様な菌とのほどよい付き合いがしやすくなる(過剰な殺菌一辺倒にならない)
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2.庭のある家のデメリット・注意点
2-1. 手入れの時間と体力が必要
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よくあるギャップ
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「休日にゆっくり手入れするつもりだった」→ 実際は忙しくて手が回らない
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草が伸びるスピードに追いつかない
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必要になる作業の例
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雑草抜き・芝刈り
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落ち葉の掃除
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樹木の剪定
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年齢とともに負担が増える可能性
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10年後・20年後も同じように世話ができるか?も考えておきたいポイント
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2-2. コストがかかる(初期費用+維持費)
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外構工事の費用
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庭・ウッドデッキ・植栽・フェンスなど
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建物本体とは別に、数十万〜数百万円単位になることも
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維持にかかる費用
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庭木の剪定費用(業者に頼む場合)
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植栽の枯れ替え・砂利やデッキの補修
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水やりによる水道代(夏場の芝・植栽など)
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2-3. 虫・雑草・アレルギーの問題
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虫が苦手な方には大きなストレスになりうる
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蚊・アリ・クモ・ダンゴムシなど
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植栽によっては毛虫・イラガなどが出ることも
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雑草との終わりなき戦い
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少し目を離すと、あっという間に伸びてくる
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除草剤を使いたくない方ほど、人手での対処が必要
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花粉やアレルギー
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植える樹種によっては、花粉や香りが強すぎる場合もある
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2-4. 近隣への配慮・プライバシーの難しさ
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落ち葉・枝がご近所に飛ぶ
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道路側に大きな落葉樹を植えると、掃除の負担が増える
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BBQ・焚き火の煙・におい
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密集地では、煙やにおい・声の大きさがトラブルの種になりやすい
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道路・隣家からの視線
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「庭を楽しむつもりが、人目が気になって外に出ない」
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フェンス・植栽・建物の配置の工夫が必要
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3.どんな人に庭が向いている?向いていない?
ケース①:庭と暮らしがうまく馴染んだ家族
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もともと外遊びやアウトドアが好き
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家族の誰かが「植物が好き」「土いじりが苦にならない」
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庭の一部を**「放っておいても絵になるゾーン」**にしている
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下草やグランドカバーを敷く
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砂利やデッキで土の部分を絞る
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完璧を目指さず、「多少の雑草や落ち葉も季節の景色」として受け入れている
→ 「きれいに整った庭」より、「自分たちなりに付き合える庭」を選んだ結果、長く楽しめているパターン。
ケース②:憧れだけでつくってしまい、持て余している家族
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建売や外構パックで「とりあえず芝生と植栽」を入れた
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忙しくて、草取りや水やりの時間が取れない
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虫が苦手で、子どももあまり外に出たがらない
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結果として「窓の外に、いつも罪悪感のある景色だけが広がっている」
→ “庭のある家”を選んだはずが、心の中に負荷として乗ってしまうケース。
最初の設計・ゾーニングでかなり避けることができます。
4.庭づくりの考え方:メリットを活かし、デメリットを軽くする
4-1. 「フルの庭」ではなく「3つのゾーン」に分けて考える
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眺めるゾーン(見せる庭)
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リビングやダイニングからよく見える位置
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低木・下草・石・デッキなどで、手入れラク+季節感を
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遊ぶゾーン(使う庭)
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子どものプール・砂場・家庭菜園など
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汚れてもよく、水も使いやすい場所(外水栓近く)
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ほぼメンテ不要ゾーン(機能の庭)
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砂利敷・防草シート・駐車スペース・物置など
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「雑草ジャングル」になりやすいところほど、徹底的にメンテナンスフリーに
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「家中ぜんぶを庭にする」のではなく、
“ここだけはきちんと整える”場所と、“ほぼ放置OK”の場所を最初から決めておくのがコツです。
4-2. 樹種選び・素材選びで、後のラクさが決まる
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樹木
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大きくなりすぎないもの
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落ち葉が少ない/管理しやすいもの
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花粉・香りが強すぎないもの
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地面の仕上げ
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芝生=「手をかける前提」の人向き
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手間を減らしたい人は
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真砂土+グランドカバー
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砂利+防草シート
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デッキ・タイルテラス などを組み合わせる
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フェンス・目隠し
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高さ・透け具合を調整して「丸見え感」をなくす
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完全クローズより、風が抜けるデザインを意識する
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4-3. 北九州・福岡エリアならではのポイント(気候目線)
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温暖・多雨で植物がよく育つ=「伸びやすい」
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台風時の倒木・飛散のリスク
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湿度が高く、日陰のジメジメでコケ・雑草が増えやすい
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シロアリ・腐朽のリスクを考えた、デッキ・土台まわりの設計が大切
→ この地域では、**「育ちすぎない庭」「風と水が抜ける庭」**をイメージすると、後々ラクになります。
5.「庭のある家」が自分たちに合うか?チェックリスト
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□ 植物や土いじりに、ちょっとワクワクする気持ちがある
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□ 家族の中に、世話好きな人が少なくとも一人はいる
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□ 完璧な庭より、「多少ラフで自然な庭」が好きだ
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□ 毎週でなくても、月に数回は庭に出る時間を取れそう
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□ 虫が出るのはある程度しょうがない、と考えられる
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□ 外構・庭にある程度の予算をまわせる
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□ 10年後・20年後の自分たちの体力も、少し想像している
チェックが多いほど、「庭のある家」と相性がよい可能性が高いです。
逆に、チェックがほとんどつかない場合は、あえて庭を小さくする/メンテ不要な外構を優先するという選択肢も“正解”だと思います。
まとめ:庭は「外の自然」と「内なる環境」をつなぐ器
庭のある家は、
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心と身体をととのえ
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子どもの感覚と成長を支え
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季節と共に暮らすリズムを取り戻させてくれる
…そんな可能性を持っています。
同時に、
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手入れの時間
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コスト
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虫・雑草・近隣配慮
といった現実的な負担も、しっかりとセットでついてきます。
大事なのは、「理想の庭」を追いかける前に、「自分たちが続けられる庭」をデザインすること。
庭は、外の自然と、家の中の空気や心の状態をやさしくつないでくれる“器”です。
その器のサイズと形を、ご家族の暮らしに合わせて一緒に考えていけるといいですね。
FAQ(人が読む用)
Q1. 庭の手入れが不安です。どれくらい時間がかかりますか?
庭の広さや植栽の種類にもよりますが、**「ほどほどの庭+管理しやすい樹・地面」**であれば、月数時間程度の手入れで保てることが多いです。逆に芝生や植栽を多くすると、夏場は毎週のように手入れが必要になることもあります。
Q2. 子どもが小さいうちは、どんな庭が使いやすいですか?
おすすめは、
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リビングからフラットにつながるデッキ+小さな土のスペース
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外水栓が近くにあり、プールや泥遊びがしやすい配置
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親の目線から全体が見渡せるレイアウト
「広さ」よりも、「目が届く」「片付けやすい」ことを優先した方が、実際によく使われる庭になりやすいです。
Q3. 虫が苦手ですが、庭のある家はやめた方がいいですか?
虫がゼロになる庭は現実的には難しいです。ただし、
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ジメジメした日陰を減らす
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落ち葉が溜まりにくい樹種・配置にする
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窓の近くに茂りすぎる植栽を置かない
などの工夫で、虫の量や出る場所をある程度コントロールできます。
「見かけたら絶対に無理」というレベルであれば、庭は最小限+メンテナンスフリー外構を優先する選択もアリです。
Q4. 将来、手入れができなくなったらどうすればいいですか?
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最初から「大きくなりすぎない樹種」を選ぶ
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必要になれば、一部を砂利やタイルに変更する余地を残しておく
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植栽の本数を絞り、**“お気に入りの数本に集中する”**設計にしておく
将来の選択肢を残したプランにしておくと、「後から全部壊してやり直し…」になりにくくなります。