カーテンの防炎加工と形状記憶の話|暮らしと空気のバランスのとり方
こんにちは、福岡のビオハウジング
健康オタクの住宅設計士、竹森哲也です。
前回は、https://biohousing.jp/spec_blog/linen-curtain-static-electricity/
「なぜリネンカーテンなのか?」
――ポリエステルとの違いと、静電気・ホコリの話――
として、
リネンにすると、光と空気の“質”がどう変わるかをお話しました。
今回は、その続きとして、
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防炎加工って、どんなしくみなの?
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形状記憶カーテンって、なぜいつもピシッとしていられるの?
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それって、からだや空気とどう関係してくるの?
を、できるだけ専門用語を減らしながらお伝えしてみます。
「全部ダメ!」と言いたいわけではなく、
“どこまでやるか”“どこはゆるめるか”を一緒に考える、そんな内容です。左は「機能(形状記憶)」を優先した整った表情、中央は「心地よさ」を優先したリネンの柔らかな表情です。右の写真のように、火を使うキッチンは機能的に、くつろぐリビングは心地よく、と場所に合わせて“役割分担”させるのがおすすめです。
カーテンの防炎加工と形状記憶の話
―― 見えない「ひと手間」と、空気とのバランス ――
1.防炎加工って、どんなことをしているの?
防炎カーテンと聞くと、
「火をつけても燃えないカーテン」
というイメージを持たれがちですが、実際には
“燃えにくくする”“燃え広がるスピードをゆっくりにする”ための加工
です。
やっていることをざっくり言うと、
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生地に「燃え広がりにくくする薬(難燃剤)」をしみ込ませる
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あるいは、糸の段階から「燃えにくくなる性質」を混ぜておく
のどちらかです。
難燃剤にもいろいろなタイプがありますが、
ここでは難しい名前は横に置いて、
「生地の中に、“火に強くする成分”を足している」
くらいのイメージで OK です。
1-1 防炎加工の「ありがたいところ」
まずは、ちゃんと良い面から。
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火がついても、一気に「ボッ」と燃え上がりにくい
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炎がゆっくり進むぶん、逃げる時間をかせげる
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劇場・ホテル・保育園・高層マンションの共用部などでは、
ほぼ「防炎が当たり前」なくらい、大事な安全装置になっています。
とくに人が多く集まる場所では、
防炎加工が命を守ることもあるので、ここは素直に「ありがたい技術」です。
1-2 それでも、暮らしの中でちょっと気になること
一方で、ふだん家で暮らしているときに気になるのは、
**「その薬剤が、空気やホコリとどう関わるか」**というところです。
(1)薬剤そのものが「ゼロ」にはならない
難燃剤の中には、国や地域によって
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「使う量を減らしましょう」
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「これはもう使うのをやめましょう」
と決められたものもあります。
今の日本で売られている防炎カーテンは、
もちろんそのルールの範囲内におさまるよう作られていますが、
「まったく何も入っていない」わけではない
ということだけは、頭の片隅に置いておきたいところです。
(2)ホコリとくっついて、部屋の中を回りやすい
難燃剤は、生地の中にだけじっとしているのではなく、
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すこしずつ表面ににじみ出たり
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日差しやこすれで、ちいさな粉になって落ちたり
しながら、ホコリとくっついて部屋の中を回ると考えられています。
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子どもは、床に近い高さで遊ぶことが多い
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ペットも同じく、床面のホコリを吸い込みやすい
こうしたことを考えると、
「なるべく、寝る場所・長くいる場所は“薬剤の量を減らしてあげたいな」
という気持ちも出てきます。
(3)燃えにくいけれど、「煙ゼロ」ではない
防炎カーテンは、
「燃えない」のではなく、「燃え広がるのをゆっくりにする」
というもの。
高温になると、
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生地そのもの
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難燃剤
が分解されて、濃い煙やにおいの強いガスが出ることもあります。
火災のとき、人の命を一番うばうのは「炎」よりも「煙」とも言われます。
防炎は「時間をかせぐ」という意味でとても大事ですが、
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そもそも火が近づかないようなコンロ・ストーブの置き方
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布を垂らさない窓の形や暖房計画
と合わせて考えていくと、より安心です。
1-3 「家」で防炎をどう考えるか?ざっくり3つのゾーン
それを踏まえて、住宅ではこんなふうに考えると分かりやすくなります。
■ 必ず検討したいゾーン
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ガスコンロのそばの小窓
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飲食スペースを兼ねる場所
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管理規約や消防との取り決めで「防炎」と書いてあるところ
→ ここは、防炎カーテンや不燃ロールスクリーンが素直に頼もしい場所です。
■ できれば慎重に考えたいゾーン
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寝室
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子ども部屋
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長くこもって仕事をする書斎
→ 火の気がほとんどない場所まで
「公共施設並みの防炎」にする必要があるか?は、一度立ち止まりたいところです。
ここは、
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リネンや綿麻など、加工の少ない自然素材
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ロールスクリーンや障子で「光・断熱」を調整
といった組み合わせの方が、
空気の軽さ・からだの感覚にとってはやさしくなります。
■ その中間ゾーン
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リビング
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和室
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家族や来客が集まる場所
暖炉や石油ストーブがあるなら、防炎や不燃をしっかり考える必要がありますし、
床暖房+エアコンで、火がカーテンに近づかない作りであれば、
非防炎のリネンでも現実的です。石油素材ではないので燃え広がりにくいです。
2.形状記憶カーテンって、どんな「ひと手間」?
次は、「いつもピシッとヒダがそろって見える」形状記憶カーテンの話です。
2-1 どうして、洗ってもきれいなヒダのままなの?
形状記憶カーテンは、ざっくり言うと
カーテンに、うすいプラスチックの上着を着せて、
そのままアイロンをかけて形を覚えさせたもの
のようなイメージです。
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工場でヒダをととのえた状態にして
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生地の表面に、樹脂(プラスチック系)の膜をつくり
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熱をかけて「この形ね」と覚えさせる
こうすることで、
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洗ってもヒダが元に戻りやすい
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アイロンいらずで、いつもきれいに見える
というメリットがあります。
2-2 「アルデヒド系樹脂」ってなに?
その樹脂に、昔からよく使われてきたのが
ホルムアルデヒドをもとにした「アルデヒド系」のノリ
です。
ホルムアルデヒドといえば、
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「新築の家に入ったときのツンとするにおい」
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シックハウス症候群の原因物質のひとつ
として名前を聞いたことがある方も多いと思います。
今の建材は、F☆☆☆☆などの基準で、
かなり放散量がしぼられるようになりましたが、
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カーテンや寝具などの**「インテリア」側は表示があいまい**
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どのくらい、どんな樹脂が使われているのか、外からは分かりにくい
という難しさがあります。
2-3 形状記憶の“便利さ”の裏側で起きていること
形状記憶カーテンにすると、
使う側としてはこんな変化が起きます。
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表面に樹脂の膜ができることで、
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すこし「ビニールっぽい」手ざわりになる
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吸湿性・通気性が落ち、空気を通しにくくなる
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表面がつるつるして、静電気が起きやすくなる
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樹脂の種類によっては、
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新品のとき
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高温・高湿になったとき
に、ごくわずかですがホルムアルデヒドが出てくる可能性もある
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もちろん、すぐに大きな害が出るという話ではありません。
ただ、
「一晩中、顔のすぐそばにある布に、
どれだけ樹脂をのせるか?」
という問いかけは、
寝室・子ども部屋ほど意識しておきたいところかなと思います。
3.防炎・形状記憶と、リネンをどう使い分ける?
ここまでをふまえて、少し整理してみます。
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防炎 → 火災時に頼もしい「時間かせぎ」の機能
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形状記憶 → 日々の家事を楽にしてくれる「見た目キープ」の機能
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リネン → 静電気が少なく、薬剤の加工も少ない「空気を軽くする」布
この3つを、
「全部やる/全部やめる」という極端な選び方ではなく、
場所ごとに“役割分担”させてあげる
というのが、現実的でやさしい考え方だと思います。
3-1 寝室・子ども部屋:いちばん「ゆるめたい」場所
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火の気はほとんどない
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長い時間、からだを預ける場所
なので、
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非防炎・非形状記憶のリネンや綿麻のカーテン
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必要があれば、窓枠内にロールスクリーンや障子で遮光・断熱
といった組み合わせがおすすめです。
3-2 リビング:ほどよく「便利さ」と「気持ちよさ」を両立
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家族も来客も集まる場所
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光の調整も大事
ここは、
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外側(窓側):ポリエステルの厚地(場合によっては形状記憶も可)
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室内側:リネンのレースで、光と空気をふんわり整える
という二重構成が、
「現実的な暮らし」と「空気の気持ちよさ」のバランスが取りやすいです。
3-3 キッチン・火のそば:まずは「燃やさない」が最優先
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ガスコンロのそば
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鍋やフライパンの炎が立つ場所
ここは、正直 リネンより安全性優先 です。
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防炎ロールスクリーン
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アルミや樹脂のブラインド
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そもそも布を垂らさない高窓・小さなFIX窓
など、
「ここは“空気感”よりも、
まずは火を近づけない&燃えにくくする」
という割り切りが大切です。
4.「燃やさない暮らし方」とセットで考える
防炎・形状記憶の話は、
どうしても「加工する/しない」という視点に寄りがちですが、
本当はもう一歩引いて、
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火をどこに置くか
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窓をどの高さ・どの形にするか
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逃げやすい動線になっているか
といった**「そもそもの設計」**とあわせて考えるテーマだと思っています。
そのうえで、
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火に近いところ → 防炎・不燃でがっちり守る
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からだを休めるところ → リネンなど自然素材で、空気を軽くする
とメリハリをつけると、
「安心」と「心地よさ」の両方に
ちゃんと予算とエネルギーを配れる
そんなカーテン選びになっていきます。
5.今回のまとめと、「第3回」へのつながり
今回のお話を、ひとことでまとめると、
防炎や形状記憶も大事。
でも、家じゅうを“便利加工だらけ”にしなくてもいい。
ということだと思います。
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防炎加工は、火災時の時間をかせぐための大切な技術
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形状記憶は、毎日のアイロンを減らしてくれるありがたい工夫
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でも、寝室や子ども部屋など「休む場所」では、
リネンなどの自然素材で空気を軽くしてあげる選択肢もある
次の第3回では、
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「じゃあ、わが家のリビング・寝室・キッチンは、どう組み合わせればいい?」
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「具体的に、どんなパターンが考えられる?」
というところを、**実際の部屋ごとの“カーテン計画”**としてお話していきます。
