断熱材の熱容量の違い:セルロースと発泡系
──同じ温度なのに、「なんだか落ち着かない」部屋の正体
こんにちは、福岡のビオハウジング
健康オタクの住宅設計士、竹森哲也です。
「断熱はしっかりしてるはずなのに、エアコンを切ると、部屋がすぐ暑くなる・寒くなる…」
そんな声を、福岡・北九州で注文住宅のご相談を受けていると、よく耳にします。
- 数値上の断熱性能(Ua値)は悪くない
- 窓もペアガラス、発泡系の断熱材もたっぷり
- なのに、温度の”落ち着き”がない
この**「落ち着き」の差を生んでいる要素のひとつが、今日のテーマである「断熱材の熱容量」**です。
ビオハウジングでは、あえてセルロースファイバーを多用していますが、その理由の一つが**「熱のため込み方が違うから」**。
今日は少しマニアックですが、セルロースと発泡系断熱材の熱容量の違いを、できるだけやさしくお話してみます。

セルロースは発泡系断熱材よりも多くの熱をため込み、室内の温度変化をゆるやかにしてくれる
1. まず「熱容量」ってなに?(中学生向けにざっくり)
● 熱容量=その素材が「どれだけ熱をため込めるか」
専門的には
比熱(1kgあたり何J/kJ必要か)× 密度(kg/m³)= 体積あたりの熱容量(kJ/m³K)
やさしく言うと
同じ大きさでも、「太った人」と「細い人」で、体温が下がりにくさが違う
みたいなイメージです。
● 断熱性能(λ・Ua)との違い
断熱性能(熱伝導率・Ua値)
→ 「熱を通しにくいコート」の性能
熱容量
→ 「その素材自身がどれだけ体温(熱)をキープできるか」
どちらも大事ですが、
- Ua値は「外に逃げる熱を減らす」
- 熱容量は「室内の温度変化をゆっくりにする」
という、役割の違いがあります。
2. セルロースと発泡系断熱材の熱容量を数字で比べる
ここから少しだけ数字を出しますが、「ざっくりの差」を見るためなので、細かいところは肩の力を抜いて読んでください。
● セルロースファイバーの熱容量(目安)
文献などを見ると、セルロース断熱は:
- 熱伝導率 λ:0.037〜0.042 W/mK 程度
- 密度:30〜80 kg/m³
- 比熱:1.3〜1.6 kJ/kgK 程度
ここでは、密度50 kg/m³・比熱1.6 kJ/kgKくらいの中間値で計算してみます。
体積あたりの熱容量(セルロース)
= 1.6(kJ/kgK) × 50(kg/m³)
= 約80 kJ/m³K
● 発泡系断熱材(EPS・硬質ウレタン)の熱容量(目安)
EPS(発泡スチロール系)
- 比熱:ポリスチレンは約1.3 kJ/kgK
- 断熱用EPSの密度:おおよそ20 kg/m³前後が一般的
とすると、
体積あたりの熱容量(EPS)
= 1.3 × 20
= 約26 kJ/m³K
硬質ウレタンフォーム(現場発泡など)
- 比熱:1.3〜1.5 kJ/kgK 程度
- 密度:30 kg/m³程度が一般的
とすると、
体積あたりの熱容量(硬質ウレタン)
≒ 1.4 × 30
= 約42 kJ/m³K
● ざっくり比較
同じ1m³あたりで比べると:
- セルロースファイバー:約 80 kJ/m³K
- EPS(発泡スチロール系):約 26 kJ/m³K
- 硬質ウレタンフォーム:約 42 kJ/m³K
→ つまり、
セルロースは、発泡系断熱材の約2〜3倍の熱をため込める
というイメージになります。
断熱性能(λ値)はどれも良いですが、「温度の変わりにくさ」という意味では、セルロースがかなり”重たい”、ということですね。
3. この差が、暮らしの中でどう効いてくるか?
数字だけだとイメージしづらいので、福岡・北九州の注文住宅を想定した「1日の温度変化」で考えてみます。
ケース①:発泡系断熱材メインの家
外張りEPS+現場発泡ウレタンなど
壁の中身はとても軽い断熱材
こんな特徴が出やすくなります:
- エアコンをつけると効きが早い
- 反面、切ると戻るのも早い
- 南面の窓から日射が入ると、昼間は一気に暑くなりやすい
- 夜、外気温が下がると、室温もわりとスッと下がる
→ 良く言えば「レスポンスが早い」
言い換えると**「温度の揺れ幅が大きくなりやすい」**家です。
ケース②:セルロースファイバー+高断熱の家
柱間に高密度セルロース
外側に発泡系(EPSなど)を組み合わせた二重断熱
(ビオハウジングの標準に近いパターン)
こちらは、
- エアコンをつけてから、じわ〜っと効いてくる
- 一度室内全体が温まると、エアコンを弱めても、温度が安定しやすい
- 南面からの日射を取り込んだとき、壁・天井に熱がたまって、ゆっくり放熱
- 夜、外が冷えても、室温はゆっくりと下がっていく
→ 一言でいうと、
「急に暑くならず、急に寒くならない家」
になります。
4. 福岡・北九州の気候との相性
福岡・北九州は、
- 夏:蒸し暑く、夜も気温が下がりにくい日が多い
- 冬:北海道ほど低くないが、湿度が高めで「体感的に冷たい」
という、**「極端な寒冷地ではないけれど、体感がブレやすい地域」**です。
この地域では、
- 断熱性能(Ua値)をしっかり取りつつ、
- 室内側にある程度の**熱容量(セルロース+モイス+漆喰など)**を持たせることで、
- 「エアコン弱連続運転で、一日中ゆるく安定した室温」を狙いやすい
というメリットが出てきます。
発泡系断熱材だけで高断熱にすると、
- 省エネ性は悪くないものの、
- “エアコンのON/OFFに振り回される暮らし”になりやすい
のに対して、セルロースを組み合わせると、
「温度の波をなだらかにするクッション」が壁の中に入るイメージですね。
5. もう一つの違い:静けさと「音の熱容量」
竹森がセルロースを使い続けている理由のひとつが、まさにここです。
● セルロースは「音」ももみほぐす
繊維がみっちり詰まったセルロースは、
空気の振動(音)を、繊維同士の摩擦で”熱”に変えてしまう
結果として:
- 雨音が柔らかく遠く聞こえる
- 外の車の音も、一枚フィルターを通したみたいに感じる
- 室内の声・テレビの音も、壁で一度「丸く」なってから隣の部屋へ伝わる
発泡系断熱材にも吸音性はありますが、密度と構造の違いで、**「静けさの質」**が変わってきます。
「C値0.2」という高い気密性能も組み合わさると、
“温度の揺れも、音の揺れも小さい家”
という、ちょっと贅沢な空間になっていきます。
6. じゃあ、発泡系断熱材はダメなのか?
いえいえ、そういう話ではありません。
● 発泡系断熱材の良さ
- 断熱性能(λ値)が良い
- 厚みのコントロールがしやすい
- 雨に濡れにくい部位では施工性も高い
- 外張り断熱で使うと、柱や梁ごと包み込んで熱橋カットがしやすい
ビオハウジングでも、
- 外側:発泡系(EPS)
- 内側:セルロースファイバー
という**「いいとこ取り」の二重断熱**を採用しています。
● 大事なのは「組み合わせ」と「思想」
- クイックに効かせたい部位:発泡系メイン
- 温度の安定・静けさを重視したい部分:セルロースや木質系
というように、
「どこに、どんな役割で、どの断熱材を置くか」を設計の段階で決めてあげること
が一番大切だと感じています。
7. ビオハウジングのまとめ方
福岡・北九州で家づくりをしていると、お客様からはよく、
「高断熱の家って、どの断熱材を選べばいいんですか?」
「セルロースって、普通の断熱材と何が違うんですか?」
と聞かれます。
私の答えはいつもシンプルで、
「数字だけ見れば、どの断熱材もそこそこ優秀です。
でも、”温度の揺れ”と”静けさ”も設計したいなら、
セルロースはかなり心強い味方になります。」
というものです。
発泡系でしっかり外側を守り、セルロースと漆喰・モイスで、内側の温度と音をじんわり整える。
そんな外皮の組み方が、ビオハウジングが今のところ「一番しっくりきている回答」です。
8. 福岡・北九州で、断熱と”空気の質”を一緒に考えたい方へ
「数字上の断熱性能だけじゃなく、体感の落ち着きや静けさまで含めて家づくりをしたい」
「セルロースと発泡系、うちの場合はどんな組み合わせが合うのか知りたい」
そんな方は、一度気軽にご相談ください。
- 福岡・北九州エリアでの具体的な温湿度のデータ
- 実際にセルロースの家に住んでいるOBさんの声
- モデルハウスでの温度・音の体感
なども踏まえながら、
「あなたの暮らしに合う断熱の組み合わせ」
を一緒に考えていけたらと思います。
FAQ(よくある質問)
Q1. 熱容量が大きいと、光熱費も必ず下がりますか?
直接イコールではありませんが、「温度の揺れが小さくなる」ことで、冷暖房のON/OFFが減り、結果的に光熱費が安定しやすくなる傾向があります。ただし、Ua値(断熱性能)や窓の性能・日射のコントロールなど、他の要素もセットで考える必要があります。
Q2. 発泡系断熱材だけの家は良くないのでしょうか?
いいえ、そうとは限りません。発泡系断熱材は断熱性能が高く、施工性も良い優れた材料です。ただし、**「温度の変化が早い」「音が軽く響きやすい」**傾向があるため、暮らし方や地域の気候に合わせて、セルロースなど熱容量の大きい材料を組み合わせると、より体感が整いやすくなります。
Q3. セルロース断熱のデメリットはありますか?
たとえば:
- きちんと吹き込むには施工技術が必要
- 濡らしてしまうと、乾きにくい部位ではトラブルの原因になる
- 発泡系と比べると、厚みの取り方や設計が少し手間
などがあります。ビオハウジングでは、外側の発泡系(EPS)と組み合わせ、構造・防水・通気のディテールを丁寧に設計することで、このあたりのリスクを抑えるようにしています。