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バシュラールで読み解く「私に還る家」とは。福岡・北九州の注文住宅で考える建築の本当の役割

こんにちは、福岡のビオハウジング 健康オタクの住宅設計士 竹森哲也です。

北九州で自然素材の注文住宅をつくる工務店として、設計から現場まで一貫して見ています。

夕方、現場から戻ってきて、玄関を開けた瞬間。

外の空気のざらつきがふっと切れて、木の匂いがやわらかく鼻に入る。

「なんだか、この家に入ると落ち着きますね」

そう言われることがあります。

その言葉を聞くたびに、家ってただ雨風をしのぐ箱ではないんだよな、と思うんです。

家は、暮らしを入れる器である前に、人が自分に戻っていくための器でもあるんじゃないか、と。

そんなことを考えていたとき、しっくりきたのが、バシュラールという哲学者の視点でした。

彼は『空間の詩学』で、家を単なる建物ではなく、人の記憶や感情、夢想を受け止める場所として見ています。

「住むための箱」ではなく「内面の居場所」

建築の世界では、つい家を

「広さ」

「動線」

「性能」

「デザイン」

で整理したくなります。

もちろん、それはすごく大事です。

でも、それだけでは説明しきれないものが、たしかにあります。

たとえば、同じ温度でも落ち着く家と落ち着かない家がある。

同じ広さでも、ほっとする家と、なぜか気が張る家がある。

バシュラールは、そういう“数字だけでは届かない領域”を見ていた人なんだと思います。

彼にとって家は、住まい手の心の中にまで入りこんでくる空間でした。地下室や屋根裏、引き出しや隅のような小さな場所にまで意味を見いだしていたのも、そのためです。 き換えるなら、こうなる気がします。

家は、私に還るための器である。

つまり、建築の役割は、目立つことではなく、

その人が自分の感覚を取り戻せるように、そっと支えることなんですよね。

「私に還る家」を建築で考えるとき、大事なのは“刺激を減らし、感覚を戻す”こと

人は、強いストレスの中にいると、自分の感覚がわからなくなります。

暑いのに我慢してしまう。

寒いのに慣れたことにしてしまう。

においがきつくても「こんなものか」と思ってしまう。

乾燥して喉が痛くても、空気のせいだと気づけない。

でも、本来の身体って、もっと繊細です。

空気が重い。

なんだか眠りが浅い。

床がひやっとする。

洗面室だけ、もわっとする。

香り付きのものが、前よりきつく感じる。

こういう小さな反応は、わがままでも気のせいでもなくて、

**“感覚が戻ってきたサイン”**だったりします。

だから「私に還る家」は、特別な演出の家ではなくて、

まずは余計なストレスを減らす家であることが大事です。

  • 夏も冬も体感温度の差が激しすぎないこと

  • 室内空気がよどみにくいこと

  • 花粉やPM2.5、黄砂が多い季節でも、窓を開けないと苦しくなる家でないこと

  • においがこもりにくく、VOC(揮発性化学物質)の負担も抑えられること

  • 冷えや乾燥で、無意識に身体が緊張し続けないこと

こうしたことを整えてはじめて、

人は「好き」「落ち着く」「なんか気持ちいい」を、自分の感覚で言えるようになるんだと思います。

建築寄りに言い換えると、バシュラールは「空間の意味は、形そのものより、経験の質に宿る」と教えてくれる

ここが、設計者としてとても大事なところです。

たとえば、見た目が美しい家をつくることはできます。

でも、その美しさが住む人を緊張させるなら、その家はまだ“その人の家”になりきっていません。

逆に、派手ではなくても、

光がやわらかく入る。

足ざわりが気持ちいい。

空気に角がない。

こもれる場所がある。

家の奥に行くほど気持ちが静かになる。

そんな家は、住むほどに、その人の内側と重なっていきます。

バシュラールが言いたかったことを、建築実務に引き寄せるなら、

家は視覚だけで評価するものではなく、身体と記憶で受け取るものだということだと思います。

彼自身も、住まわれた空間は幾何学的な空間を超える、という方向で家を見ていました。 はどう設計するのか

ここを、できるだけ建築寄りに整理してみます。

1.温熱環境を整える

最初に大事なのは、やっぱり温熱です。

寒い家、暑すぎる家は、それだけで身体に小さな緊張をつくります。

冬の廊下で肩が上がる。

夏の二階で思考が止まる。

脱衣室だけ冷える。

寝室だけ暑くて寝つきが悪い。

こういう状態では、「自分に還る」前に、身体が防御に入ってしまうんです。

だから、断熱・気密・日射の調整を丁寧にして、

家の中の場所ごとの体感温度差を小さくする。

これは思想ではなく、かなり具体的な建築の仕事です。

2.空気環境を整える

次に、室内空気です。

空気は見えません。

でも、毎日いちばん多く身体に入ってくるものです。

においが混ざる家。

湿気が抜けにくい家。

カビやダニが出やすい家。

換気しているのに、なぜか空気が重い家。

こういう家では、感覚は鈍るか、逆にずっと警戒したままになります。

だから、換気計画だけでなく、

空気の流れ方、湿度の滞留、収納の奥の冷え、素材から出る成分まで含めて考える必要があります。

無垢材、漆喰、塗り壁、セルロースファイバーのような自然素材も、

単に“ナチュラルで見た目がいい”からではなく、

空気環境と体感を支える素材として選ぶと、意味が変わってきます。

3.こもれる場所をつくる

人には、広さだけでなく“こもり”も必要です。

バシュラールが、隅や引き出し、屋根裏のような場所に意味を感じたのは、

人が安心するには、ただ開放的なだけでは足りないと知っていたからだと思います。 場所。

視線を外せる場所。

一人で深呼吸できる場所。

それは大きな書斎じゃなくてもいいんです。

窓辺のベンチでも、階段下でも、寝室の一角でもいい。

その“小さな居場所”があるだけで、家はぐっと人を受け止める器になります。

4.素材の触れ方を整える

最後に、素材です。

床がつるつる反射しすぎない。

木がベタつかず、さらっとしている。

壁が光を跳ね返しすぎず、やわらかく受ける。

音がキンキン響かない。

こういうことは、派手ではないですが、すごく効きます。

杉の無垢床の足ざわり。

漆喰や塗り壁の光のにじみ方。

セルロースファイバーで包まれた空間の静けさ。

こういう“素材の気配”が、住む人の緊張を少しずつほどいていく。

私は、その積み重ねが建築のやさしさだと思っています。

2つの例で考える、「私に還る家」のつくり方

例1:家族の気配は感じたい。でも、ずっと開放的すぎると疲れる家

最近は、広いLDKが中心の家が多いです。

もちろん、それ自体は悪くありません。

でも、いつも誰かの視線や音が入ってくると、

家なのに休まりにくい、ということもあります。

そんなときは、

  • リビングの一角に少し奥まった読書スペースをつくる

  • ダイニングから少しだけ離れた窓辺にベンチをつくる

  • 廊下をただの通路で終わらせず、間(あいだ)の空間として使う

こうするだけでも、家が“過ごす場所”から“整う場所”に変わってきます。

例2:性能は高いのに、なぜか落ち着かない家

これは意外とあります。

数字はいい。

設備もいい。

でも、まぶしい、乾く、音が響く、空気が忙しい。

こういう場合、性能が足りないというより、

感覚への翻訳が足りていないことがあります。

たとえば、

  • 光を強く入れすぎず、拡散させる

  • 風が直接当たりすぎないようにする

  • 収納の奥の湿気や冷えを防ぐ

  • 床や壁の素材感を整える

  • においの混ざり方を減らす

こういう細部の積み重ねで、

家は“すごい家”から“帰りたくなる家”に変わります。

福岡・北九州の注文住宅だからこそ、この視点は大事だと思う

福岡や北九州で家づくりをしていると、

湿度、黄砂、花粉、PM2.5、夏の長さ、梅雨時期のにおい、冬の底冷え。

こういう課題は、かなり現実的です。

だから、「私に還る家」は、

ふわっとした精神論だけではつくれません。

  • 外気の影響を受けにくい断熱と気密

  • 湿気をため込みにくい計画

  • カビを生みにくい冷えの少ない設計

  • 室内空気の質を落としにくい素材選び

  • 窓を開ける気持ちよさと、開けなくても苦しくない安心感の両立

この両方が必要です。

つまり、

バシュラールの思想を、福岡・北九州の注文住宅に置き換えるなら、

“内面の居場所”を、温熱・空気・素材・居場所設計で現実にすること


なんだと思います。

家は、私を飾るものではなく、私を戻すもの

建築って、つい“見せるもの”になりやすいです。

でも、本当にいい家は、見せる前に、住む人を受け止めている気がします。

帰ってきたときに、ほっとする。

香り付きのものが強く感じられるようになる。

空気の違いに気づける。

子どもが「家がいちばん落ち着く」と言う。

眠りが少し深くなる。

そういう変化は、とても小さいようで、実は大きいです。

バシュラールは、家を心の風景として読んだ人でした。

そして私は、その視点を借りながら、

家を**“私に還る器”として設計したい**と思っています。

福岡・北九州で注文住宅を考えるとき、

性能や間取りだけでは言い表せない違和感や願いがあるなら、

それはすごく大事な感覚かもしれません。

図面の段階で、そういうことも含めて整理できます。

気になる方は、気軽にご相談ください。

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