【空気の基準①】化学物質を減らすだけでは足りない?
ビオハウジングが「発酵する家」にこだわる理由(前編)

こんにちは。福岡のビオハウジング、
健康オタクの住宅設計士・竹森哲也です。
前回の【空気の基準①】では、
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屋外の 環境省の環境基準
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屋内の 厚生労働省の室内濃度指針値
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家の建て方としての 建築基準法のシックハウス対策
という、「世の中の空気の基準」をひと通り整理しました。
ざっくり振り返ると、
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建築基準法のシックハウス対策
→ 家の建て方に関する “スタートライン” -
厚労省の室内濃度指針値
→ 室内空気そのものに対する “ゴールライン”
という関係でした。
では、ビオハウジングは
そこから先に、どんな基準を見ているのか。
今日は、その入口として、
「発酵する家」= 化学物質を除けるだけでは満足できなかった理由
を、少し丁寧に書いてみたいと思います。
1.「数字の上ではきれいなのに、何かが足りない」違和感
シックハウス問題が騒がれた時代から、建築業界全体で、
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F☆☆☆☆ の建材を使う
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24時間換気で 0.5回/h 以上を守る
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ホルムアルデヒドなどの濃度を測る
といった取り組みが進んできました。
ビオハウジングでも、家づくりを始めた当初はとにかく、
「化学物質を、できるだけ減らすこと」
に一生懸命でした。
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自然素材の仕上げを増やす
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接着剤や塗料の種類を選び直す
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換気計画を図面の段階からしっかり立てる
こうした工夫を積み重ねていく中で、
「前のアパートより、頭痛が減りました」
「子どもの湿疹が、少し落ち着いた気がします」
といった声も、たくさんいただくようになりました。
「やっぱり、空気って大事なんだな」と、
手応えも感じていました。
2.それでも残った、「生きていない空気」という感覚
ところが、ある時期から
どうしても拭えない違和感が出てきます。
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検査結果:問題なし
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法律・指針値:すべてクリア
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温度・湿度:教科書どおり
…それなのに、
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深く息を吸い込みたくならない
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長くいると、妙に疲れてしまう
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心が少しだけ、固くなるような感じがする
そんな家が、たしかに存在していたのです。
数字の上では「きれいな空気」になっている。
基準も、条件も、ちゃんと満たしている。
それでもどこか、
「空気はきれいなはずなのに、
ここでずっと過ごしたいとは思えない」
そんな、**“生きていない空気”**の感覚が残っていました。
3.数値では完璧じゃないのに、ほっとする家もある
一方で、数値だけを見れば
そこまで「完璧」とは言えない家なのに、
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玄関を開けた瞬間にホッとする
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子どもが、入ってすぐ床でゴロゴロし始める
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お客様が「なんか、空気がやわらかいですね」とぽろっと言う
そういう家も、確かにあります。
二つの家を比べてみても、
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断熱性能や換気回数は、ほとんど同じ
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使っている材料も、大きくは変わらない
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検査結果も、どちらも基準値内
それなのに、
身体が受け取っている感覚はまるで違うのです。
このギャップが、だんだんとはっきりとした問いになっていきました。
「数字の“きれいさ”と、身体が感じる“いごこち”は、
別のものなんじゃないか?」
ここから先の問い直しが、
ビオハウジングが「発酵する家」という考え方にたどり着く、
大きなきっかけになりました。
※後編では、この続きとして
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化学物質を「ゼロ」にする発想の限界
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「発酵する家」として、どんな空気の基準を持っているのか
を、もう少し踏み込んでお話ししていきます。後編https://biohousing.jp/uncategorized/28823/?preview=true
FAQ(本文用・前編向けのミニ版)
Q1.なぜ、化学物質を減らしても「何かが足りない」と感じたのですか?
A.建築基準法や厚労省の指針値を守り、自然素材も使っているのに、「深く息を吸いたくならない」「長くいると妙に疲れる」という家があったからです。逆に、数値が完璧ではなくてもホッとする家もあり、数字と体感のズレに違和感を覚えました。
Q2.「生きていない空気」というのは、どういう感覚ですか?
A.検査結果や数値上は問題がないのに、空気がどこか平板で、呼吸が浅くなり、心も少し固くなるような感覚です。「安全ではあるけれど、ここに長くいたくはない」という、言葉にしにくい居心地の悪さを指しています。