断熱性能が良い家は快適か?そのデメリット その3 高断熱の落とし穴?——夏にこもる熱と「魔法瓶状態」

高断熱の落とし穴?——夏にこもる熱と「魔法瓶状態」
高断熱・高気密の家といえば、「冬はあたたかく、夏は涼しい」というイメージを持たれている方も多いかもしれません。
たしかに、断熱性能が高いと外の暑さや寒さの影響を受けにくく、冷暖房の効率も良くなります。
しかし、その性能が裏目に出てしまうこともあります。
それが、「夏場の熱ごもり」問題です。
高断熱の家は、一度熱が中に入ると、それが逃げにくい構造をしています。
つまり、外の暑さは防げても、室内に取り込んでしまった熱を“閉じ込めたまま”になってしまうことがあるのです。
特に、日射遮蔽(太陽の光を室内に入れない工夫)が不十分な場合、
夏の日差しで暖められた室内の空気や建材が、どんどん蓄熱していきます。
結果として——
せっかく断熱したのに、「サウナのように暑い」家になってしまうということも、実際に起きています。
これはまさに、“夏の魔法瓶状態”。
保温性が高いことが裏目に出て、「熱を外に逃がせない家」になってしまうのです。
☀ では、どうすれば防げるのか?
夏の熱ごもりを防ぐには、「断熱」だけでなく「日射遮蔽」の工夫がセットで必要です。
たとえば:
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軒や庇を出して、夏の高い日差しを室内に入れない
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外付けブラインドやアウターシェードなどで**“外で”日射をカット**
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断熱性能の高いトリプルガラス+日射取得型 or 遮蔽型Low-Eガラスを使い分け
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窓の向きと大きさを見直し、南面と西面の窓対策を重点的に
夜間や朝方に通風を促す設計で、熱を逃がす
快適な夏の住まいとは?
夏の快適さは、**冷房機器に頼る前に、熱を「入れない」「ためこまない」「逃がす」**という視点で設計することが鍵です。
高断熱は、あくまで“熱の移動をコントロールする器”。
その器の中身——つまり日射、風、湿度、素材の工夫があってこそ、本当の快適性が生まれます。
魔法瓶は、中に入れたものを「保つ」道具です。
夏に熱を入れてしまえば、しっかり保温してしまうのが高断熱住宅。
だからこそ、夏は「遮る」「逃がす」工夫が必要なのです。
「断熱=万能」ではないという視点を持つことで、暮らしはもっと快適になります。