日本の住宅における断熱性能は、国が定める「断熱等級」と、民間団体による高性能基準「HEAT20」によって評価されます。
現在、多くの既存住宅は断熱等級3以下にとどまっており、
国は2025年以降、断熱等級4以上の住宅性能を義務化する方針を打ち出しています。
この取り組みは、エネルギー消費を抑えるだけでなく、居住者の健康と快適な暮らしを守ることが目的です。
つまり、断熱性能が高い家なら、少ない冷暖房でも家中を快適に保てるのです。
私たちが採用するのは、それよりさらに高い水準であるHEAT20 G2.5グレード(UA値0.3W/㎡K)。これは、北海道などの寒冷地でも快適な室温が保てる基準で、冬でも暖房を最小限に抑えながら健康的な暮らしを実現できます。
断熱性能の向上は、単に「寒くない」「暑くない」というだけでなく、睡眠の質や免疫機能、血流、自律神経の安定など、私たちの身体全体に関わるものです。特に睡眠中は、皮膚からの熱放散がスムーズに行われることで深部体温が自然に下がり、深い眠りへと導かれます。これを支えるのが、室温・湿度の安定です。
もちろん、高性能な断熱仕様には一定の建築コストがかかります。けれども私たちは、建築費と日々の光熱費、健康面の安心を長期的なライフサイクルでシミュレーションした結果、G2.5グレードがもっともバランスが良いと考えています。単なる省エネ性能ではなく、「身体がよろこぶ空間」をつくるために。私たちは、断熱性能を住まいづくりの土台として大切にしています。
断熱とは、単に断熱材を多く入れることではなく、「どこに、どれだけ効かせるか」という“断熱の配分”が重要です。
日本には四季があり、暮らし方や地域特性により断熱の考え方は異なります。たとえば夏を重視するなら、屋根や西側の壁・窓への断熱と遮熱が鍵となり、熱の侵入を抑えることで冷房に頼りすぎない快適な住空間が生まれます。逆に冬を重視するなら、床や北面の壁、開口部からの熱損失を防ぐための断熱と高気密化が必要で、これにより暖房効率が上がり、冷え込みやヒートショックのリスクも低減されます。
そして私たちが提案するのは、夏にも冬にも快適な“通年型断熱配分”であり、屋根・壁・床に地域に応じた断熱厚を確保し、窓には断熱ガラスと遮蔽を組み合わせ、通風と気密を両立させることで、HEAT20 G2.5相当(UA値0.3)という高性能な空間を実現しています。これはエネルギー削減だけでなく、睡眠の質、免疫機能、血流、自律神経の安定といった身体への健康効果にもつながります。
つまり断熱とは、暮らし方に合わせて、もっとも負担がかかる場所をもっともやさしく整える、“効かせ方のデザイン”なのです。
私たちは、建物を「内側」と「外側」の両面から断熱する“ダブル断熱工法”を採用しています。
これは、一般的な片面断熱よりも断熱効果が高く、外気温の影響を受けにくく、室内の温熱環境をより安定させることができるため、冷暖房の負荷が軽減され、体へのストレスも抑えられます。
内側の断熱|セルロースファイバーによる充填断熱
柱と柱の間、つまり構造躯体の内側には、天然素材のセルロースファイバーをすき間なく吹き込んでいます。
セルロースファイバーは主にリサイクル新聞紙を原料とする繊維系断熱材で、次の特徴があります。
・繊維の間に空気をたっぷり含むため、断熱性・吸音性に優れる
・水分を適度に吸放出し、内部結露を抑える調湿効果がある
・ホウ酸処理により、防虫・防カビ性能も備えている
吹き込みは専用の機械で密度を調整し、躯体内のすき間をしっかり埋めることで断熱のムラを防ぎます。その結果、冬の寒さや夏の暑さを壁の中でブロックし、室内を一年中快適な温度に保つ土台がつくられます。
外側の断熱|EPSによる付加断熱
構造の外側、柱の外側にはEPS(発泡ポリスチレンフォーム)と呼ばれる板状の断熱材を貼り重ねています。EPSは軽量で断熱性に優れ、経年劣化もしにくい素材です。建物を外側から包み込むことで、構造体そのものの温度変化を和らげ、壁内部の温度ムラや結露リスクを抑えます。さらに内断熱と組み合わせることで、熱が逃げやすい部分(熱橋)を抑えた、高性能な断熱構造を実現しています。
外装仕上げ|塗り仕上げで家に個性を
EPSの外側には仕上げ材を重ねます。一般的にはサイディングなど既製品を使うケースが多いですが、当社では基本的に“塗り仕上げ”を採用しています。左官職人が一棟一棟、手作業で塗り上げることで、同じ職人でも毎回微妙に異なる表情が生まれます。機械には出せない柔らかな質感や、光のあたり方による陰影の美しさが、住まいに唯一無二の個性を与えます。この仕上げが、暮らしに豊かさと温もりをもたらす家づくりの大きな特徴です。
断熱性能の高い住まいを実現するには、壁や天井だけでなく、開口部・換気・気密といった“見落とされやすい部分”の性能を高めることが非常に重要です。
窓、換気、気密。この3つは、単に断熱を支えるだけでなく、「住まいの呼吸」「人の呼吸」「家計の呼吸」までも整える性能要素です。私たちは、見えない部分こそ大切に、目に見える快適さにつなげていきます。
窓(開口部)
壁に比べてはるかに熱が出入りしやすい窓は、断熱性能を左右する最大の弱点です。そこで当社では、業界最高水準の断熱性能を持つトリプルガラス窓を標準採用しています。3層構造のガラス間には熱を通しにくいアルゴンガスを封入。フレームには断熱性に優れた樹脂素材を使用。
さらにLow-E金属膜を施し、夏は日射熱をカットし、冬は室内の暖かさを逃しません。これらにより、窓からの熱損失を大幅に抑え、1年を通じて室温を安定させる効果を発揮します。
換気(第一種熱交換型換気システム)
高気密・高断熱の住まいでは、計画的な換気設計が欠かせません。当社では、熱交換効率に優れた「第一種熱交換換気システム」を採用。これにより、冷暖房で調整した室温をできるだけ保ちながら外の新鮮な空気と効率よく入れ替えることができます。その結果、室内の空気環境を清潔に保ちつつ、エネルギー効率にも優れた住まいが実現します。冷暖房費の削減はもちろん、身体への負担が少ない“呼吸が楽な空気”を提供します。
気密(隙間を限りなくゼロに)
高断熱の性能を最大限に引き出すためには、“気密”が非常に重要です。私たちは施工現場で、断熱材の隙間や構造材の接合部など、目に見えにくい部分こそ丁寧に施工し、極限まで隙間を減らします。実際に完成後の気密測定では、「家1棟あたりの隙間面積が「証明写真1枚分」に満たないレベル(C値≒0.3以下)」を実現。これは、外気の侵入・室内の熱逃げ・湿気の進入を防ぎ、住まいの寿命を守る上でも非常に重要な要素です。
ビオハウジングでは、建築費だけでなく、その後にかかる冷暖房費を含めた「ライフサイクルコスト」に着目し、30年後まで見据えた住まいづくりを行っています。この30年間という期間は、多くのご家庭が住宅ローンを返済していく時間と重なり、人生でもっとも家にかかるコストが集中するタイミングです。私たちはこの期間を見越して、断熱性能によってその支出がどう変わるのかを、詳細にシミュレーションしています。
全国5地域でのシミュレーション
福岡を含む全国5つの省エネ地域において、気象庁の30年間の平均データをもとに、年間の冷暖房負荷を計算しました。さらに、HEAT20の各等級ごとに断熱仕様や窓性能を変えて、建築費と年間の光熱費を比較しています。
実生活に近い条件での検証
シミュレーションでは、実際の生活を想定し、エアコン1台または2台での運転をモデル化。暖房は日中20℃・夜間18℃、冷房は27℃といった一般的な温度設定を基準に、室温の安定性やエネルギー消費量を検証しました。
将来を見据えた電気料金の試算
電気料金は年率3%程度で上昇すると仮定し、20年後・30年後の支出も想定。さらに将来の支出価値を実質的に比較するため、割引率2%を適用し、長期的なコストを試算しました。
G2.5で見込める投資回収
この検証から導かれたのが、HEAT20 G2.5レベルの断熱性能です。G1に比べると初期建築費はやや上がるものの、冷暖房費は大幅に削減され、約12年程度で断熱投資を回収できると見込まれます。
家じゅう快適に保つ性能
G2.5であれば、エアコン1〜2台で家中の温度差を2℃以内に保つことが可能です。さらに年間消費電力も約8,000〜10,000kWh程度に抑えられ、快適性と省エネ性を両立します。
“ちょうどいい選択”という答え
断熱性能を上げすぎればコストが増し、抑えすぎれば快適性や電気代が不安定になる。その中間で三拍子揃うのがHEAT20 G2.5という性能水準です。これからの30年、暮らしの質も家計の安心も大切にしたいご家族にとって、G2.5は“ちょうどいい選択”といえるでしょう。
ビオハウジングが高断熱住宅にこだわる理由のひとつに、「健康」があります。厚生労働省の統計によれば、冬の寒さが原因となる健康被害は決して小さくありません。ヒートショックをはじめ、脳梗塞・心疾患・風邪やインフルエンザなど、すべての病気において冬季の発症リスクは上がるということが、全国的なデータから明らかになっています。
さらに驚くべきことに、転倒や火傷などの家庭内事故も冬に増加する傾向があります。
寒さによる運動不足、厚着による動きの鈍化、暖房器具への接触や火災リスクなど、「寒い家」が人に与える影響は思っている以上に深刻です。
また、慶應義塾大学の研究では、「脱衣室の温度が2℃上がると、介護期間が平均4年短縮される」という発表もあります。自分や家族の介護期間が4年短くなるとしたら――その価値は計り知れません。住宅の断熱性を高めることは、単なる快適性の話ではなく、人生の質を変える健康投資でもあるのです。
ビオハウジングは、温度のストレスをなくし、安心して呼吸し、自由に動ける家をつくることで、「健康に暮らす土台」そのものをご提案しています。