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アグリゾートで手作り味噌講座|自分の手の常在菌と育てる「わが家の味噌」

こんにちは、福岡のビオハウジング

健康オタクの住宅設計士、竹森哲也です。

先日、アグリゾートのキッチンで

「自分の手で仕込む味噌 ― 菌と暮らし、味噌と暮らすということ ―」

という手づくり味噌講座をひらきました。

単なる「保存食づくり」ではなく、

  • 自分の手の常在菌を、汚れではなく“仲間”として捉え直すこと

  • 味噌づくりを通して、「菌とケンカしない暮らし方」を体で感じること

をテーマにした、ちょっと変わった味噌講座です。


今日のゴールは「味噌」よりも、その先の暮らし

講座では、最初にこんなお話をしました。

  • 視点をひろげる

    味噌づくりを「保存食づくり」から

    **“菌と一緒に暮らす練習”**へ。

  • イメージを変える

    「自分の手の常在菌=汚れ」ではなく、

    長年一緒に暮らしてきた見えないパートナーとして見てみる。

  • スキルを得る

    自分の味噌の塩分%を自分で計算できるようになる

レシピ通りに仕込んで終わり…ではなく、

今日仕込んだ味噌が、

「一年後、わが家の小さな守り神になりますように」

そんな願いをこめて、講座をスタートしました。


味噌づくりは「菌と暮らす練習」

手の常在菌は“汚れ”ではなく、「見えない相棒」

まずお話したのが手の常在菌のこと。

  • 皮ふ・口・腸などに、最初から住んでいる菌たち

  • ほとんどは悪さをせず、むしろ体を守ってくれている

  • 食べ物・暮らし方・住んでいる土地で、少しずつ顔ぶれが変わる

「しっかり手を洗ってから仕込む」のは大前提ですが、

それでも、

  • 泥・ホコリ・油汚れ、通りすがりの菌は落ちる

  • でも、皮ふの奥にいる常在菌はゼロにはならない

という話をしました。

大事なのは、「全部殺す」ことではなく、

汚れは落としつつ、体の中の常在菌には残ってもらうバランス。

味噌づくりは、その象徴のような作業です。


味噌は「菌たちの共同プロジェクト」

工場の味噌と、手づくり味噌のちがい

スライドでは、工場味噌と手づくり味噌の対比もお見せしました。

  • 工場の味噌

    • 同じ菌株・同じ温度管理で、

      一年中ほぼ同じ味・香りにそろえられる

    • 均一で安定した品質

  • 手づくり味噌

    • 作る人の手、家の空気、道具、季節が毎回ちがう

    • 「その家だけの味・香り・色」が育つ

    • 家族に合う菌と空気を育てるプロジェクト

レシピは似ていても、

仕込む場所や人が変われば、

発酵のメンバーも、物語も変わってくるという話に、

皆さん大きくうなずいてくださっていました。


味噌発酵は「オーケストラ」だった

ここからは、少し理科の時間。

味噌の中で何が起きているかを、4つの楽章で紹介しました。

第0楽章:カオス期 ―― あなただけの音色

仕込み直後の樽の中には、

  • 手の常在菌

  • 家の空気・道具についてきた菌

  • 麹菌や乳酸菌の一部

…など、いろんな菌が混ざり合っています。

多くは途中でいなくなりますが、

この**「一瞬だけ参加するメンバー」**が、

味噌の立ち上がりに細かいクセをつけてくれます。

同じレシピでも味が違うのは、

この第0楽章の“わずかな音色の違い”のせい。

という話をすると、

皆さん「うちの味噌、楽しみになってきた」と笑顔に。


第1楽章:麹菌 ―― 土台を作る工場長

麹菌は、仕込み前後に大量の酵素をつくります。

  • アミラーゼ:デンプン → 糖

  • プロテアーゼ:タンパク質 → アミノ酸

このおかげで、

  • 乳酸菌や酵母菌の「ごはん」が用意される

  • 甘みや旨味の“材料”がそろう

静かだけれど、とても大切な土台づくりの時間です。


第2楽章:乳酸菌 ―― 「酸の世界」で守る番人

次に元気になってくるのが乳酸菌。

  • 麹がつくった糖を食べて「乳酸」をつくる

  • 樽の中が少しずつ酸性に傾く

  • 腐敗菌が居づらくなり、保存性が上がる

同時に、味わいにまろやかな酸味と深みが生まれてきます。


第3楽章:酵母菌 ―― 香りを生み出すアーティスト

最後の主役が酵母菌。

  • 糖からアルコールと二酸化炭素をつくる

  • さらに、エステルなどの複雑な香り成分を生み出す

お椀に味噌を溶いたときにふわっと立つ、

あの「味噌らしい香り」は、この第3楽章のしごとです。


4つの楽章+0楽章=「わが家のハーモニー」

まとめると、味噌発酵は

  • 第1楽章:麹菌が糖と旨味の土台を作る

  • 第2楽章:乳酸菌が酸と保存性を与える

  • 第3楽章:酵母菌が香りとコクで仕上げる

  • 第0楽章:仕込む人と家が、個性を吹き込む

という、見事なリレーとハーモニー

講座の最後には、

「自家製味噌は、

同じ楽譜を使っても、

演奏者とホールが違えば

響き方が変わる音楽。」

という一文を一緒に味わいました。


ワーク:自分の味噌の「塩分%」を計算してみよう

今回の講座では、

ただ仕込むだけでなく、塩分の計算ワークも行いました。

ワーク①:今日の塩分を出してみる

  1. 今日使った

    • 大豆



    • のグラム数を書き出す

  2. 全体量(A)=大豆+麹+塩+水

  3. 塩分% =(塩の重さ ÷ A)×100

実際に電卓を叩きながら、

「うちの味噌、だいたい○%なのか!」

と、皆さんとても盛り上がっていました。

ワーク②:来年のレシピを設計する

さらに、

  • 「ちょっとしょっぱかったら、来年は何%にする?」

  • 「甘めが好きなら、塩分を何%にしてみようか?」

という「未来の味噌レシピ」も、その場で設計。

「一年後の自分へのメッセージ」を、レシピカードに書き込んでお持ち帰りいただきました。


味噌は「家の菌のアルバム」であり、小さな守り神

講座の終盤では、味噌と暮らすことについてのお話も。

  • 手前味噌は、

    家の常在菌のアルバムであり、家族の食と時間の記録

  • 引っ越しのときに味噌を連れていく文化

    → 「安心の種」を持っていくイメージ

  • 子どもと一緒に仕込むときは、

    「君の手の菌も、この味噌の中で育っているよ」と伝えてあげる

レシピだけでなく、“手の記憶ごと”受け継ぐ味噌づくりは、

「自分の手を信じ直す」小さな儀式でもあります。

アグリゾートという「土と菌の場」で行ったからこそ、

参加者の皆さんも、

味噌樽を台所の小さな守り神のように感じてくださったようでした。


アグリゾートという「場」と、発酵の相性

今回会場となったアグリゾートは、

  • 畑や土、季節の空気をそのまま感じられる場所

  • 発酵する食と、暮らし方をつなぎやすい環境

でもあります。

「自分の菌を、一度味噌樽に預けて、

一年後に“わが家のエッセンス”として受け取る。」

という循環のイメージが、

いつもの家とはまた違う、開かれた空気の中でしっくり来た一日でした。


おわりに:菌とケンカしない暮らしへ

講座の締めくくりは、この言葉です。

味噌と暮らすことは、

菌とケンカせずに生きる練習であり、

家族の歴史と体の感覚を静かに育てていくこと。

今日仕込んだ味噌が、

一年後、それぞれの家の台所で

「小さな守り神」として笑ってくれますように。

Q1. 手作り味噌講座では、どんなことが学べますか?

A. 味噌づくりの手順だけでなく、手の常在菌と発酵の関係、麹菌・乳酸菌・酵母菌がリレーしながら味噌を育てていく仕組み、自分の味噌の塩分%を計算する方法などを学べます。味噌を「家の菌のアルバム」として暮らしに迎える視点も大切にしています。

Q2. 手はどれくらい洗えばいいのでしょうか? 常在菌は残しておきたいのですが…

A. 泥やホコリ、油汚れ、通りすがりの菌はしっかり落としたいので、石けんで丁寧に手洗いすることが基本です。ただし皮ふの奥にいる常在菌まではゼロにはならず、洗ったあと時間が経つと汗や皮脂と一緒に少しずつ表面に戻ってきます。「汚れは落とし、体の菌とは共存する」というイメージで考えてもらえれば大丈夫です。

Q3. 子どもと一緒に参加しても大丈夫ですか?

A. もちろん大歓迎です。子どもたちにとっては、味噌づくりは「菌と一緒に料理をする」貴重な体験になります。「君の手の菌も、この味噌の中で育っているよ」と伝えてあげると、自分の体や手を大事に思うきっかけにもなります。

Q4. 自宅で仕込むとき、カビが心配です。どうしたらいいですか?

A. 仕込みのときに空気が入りすぎないようにしっかり押し固めること、表面を平らにして塩やラップでフタをしてあげること、温度変化が少ない場所で保管することが大切です。多少の表面カビは取り除けば大丈夫なことも多いので、「きれいに整えて、あとは菌を信じて待つ」くらいの気持ちで付き合ってみてください。

Q5. 味噌の塩分は、どのくらいが目安ですか?

A. 講座では、仕込み全体の重さに対して10〜12%を目安にしています。しょっぱすぎたと感じたら、次回は1〜2%下げてみる、甘めが好きなら麹を増やしてみるなど、自分と家族の舌に合わせて「来年のレシピ」を設計していくのがおすすめです。

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