ARCHITECT
家を建てようと考えたとき、
多くの方がまず思い浮かべるのは「間取り」や「デザイン」、「外観」、そして「予算」かもしれません。
もちろん、それらも大切な要素です。
けれど私が家づくりをお手伝いするうえで、いつも問い直してほしいと願っているのは、
**「この家で、どう生きていきたいのか」**ということです。
私はかつて、体調を崩したことをきっかけに、
自分自身の感覚や呼吸、そして心の声に目を向けざるを得ない時期を過ごしました。
人工的な刺激の強い空間では苦しく、
逆に、静かで自然素材に囲まれた古い家に身を置くと、
呼吸が深くなり、頭が軽くなって、少しずつ身体が整っていく。
そんな体験を重ねながら、私は**「自分という存在が、本来どんなリズムで生きていたのか」**を、ようやく感じ取ることができたのです。
あのとき私は、
“知識や理性で組み立てた自分”ではなく、
**“感覚の奥に眠っていた、本来の自分”**に出会った気がしました。
それは、数値や理論だけではとらえきれない、
もっと深い“いのちの声”に耳を澄ませるような感覚。
だからこそ、私は建築の中に「空気」「微生物」「温熱環境」そして「感覚の快・不快」を織り込んでいきます。
素材の持つ呼吸、光と風の流れ、温もりと湿度。
そうした小さな要素が、住む人の身体と心を、日々静かに整えていく。
それが、“本当の住まい”の力だと思うのです。
デザインや性能は、その本質を支えるための“道具”にすぎません。
私が設計の軸にしているのは、
「人が深く呼吸できる空間」、
**「感覚がほぐれ、内側から整う住まい」**を実現すること。
それは、家という器をとおして、
**「自分自身に、もう一度出会うための場所」**をつくることでもあります。
竹森哲也
一級建築士、宅地建物取引士、一級シックハウス診断士、
一級電磁波測定士、日本発酵文化協会認定講師
建築業に携わって化学物質過敏症になり、体質改善のためにマクロビオティック等の食事法を学ぶ。人にとってのストレスのない住環境を研究し、発酵学を建築に応用した“ビオハウジング(生きた家)”をプロデュース。酵素や微生物、人間が共生できる家づくり、食や生活の提案をしている。