真空水筒を落とした日から考えた「家の断熱性能」――見えない傷が、冬の寒さになる
こんにちは、福岡のビオハウジング 健康オタクの住宅設計士 竹森哲也です。
先日、いつも愛用している真空の保温水筒を、うっかり床に「ガンッ」と落としてしまいました。
その日は「やってしまった…」くらいで終わったのですが、翌日から変化が出てきました。
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朝、あつあつのお茶を入れたはずなのに、お昼にはもうぬるい
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夕方には、ほぼ常温…
「あれ? こんな水筒だったっけ?」と首をかしげつつ、手で触ると、外側までほんのり温かい。
このとき、「あ、これ“断熱性能”が落ちてるな」と、職業病的に家のこととつなげて考えてしまいました。
今日は、この真空水筒の“落とした事件”をきっかけに、
福岡・北九州の家の断熱性能・気密性能の話を、やさしく整理してみます。

1. 真空水筒の中で、いったい何が起きているのか?
まずは水筒の仕組みを、ざっくり。
● 真空水筒の断熱のしくみ
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外側の金属の筒
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内側の金属の筒
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その間に「ほぼ何もない」真空層
熱は、本来こうして逃げていきます。
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伝導(触れているところからじわじわ)
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対流(空気が動いて運ぶ)
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放射(遠赤外線のように、離れていても伝わる)
真空になっていると、
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空気がないので「対流」で熱が運ばれない
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金属同士も、限られた部分しかくっついていないので「伝導」も少ない
つまり、熱の逃げ道を徹底的にふさいだ構造になっています。
● 落としたら、なぜ急にぬるくなるのか
水筒を強く落とすと、こんなことが起きていると言われています。
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衝撃で、内側と外側の金属が「ぐっ」と近づく
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どこかで真空層がつぶれたり、空気が入り込んだりする
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一部がベタっと接触して、熱の“橋”(熱橋・ヒートブリッジ)ができる
その結果…
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中のお湯の熱が、
→ 接触部分から一気に外側へ「伝導」
→ 外側の金属があたたまり、そこから空気へ放熱 -
体感としては
→ 「あれ、前より一気にぬるくなる」
見た目はほぼ変わらないのに、中の“目に見えない構造”が壊れると、性能はガクッと落ちる。
ここが、家の断熱性能とよく似ているポイントです。
2. 家の断熱性能も「真空水筒」と同じで、外からは見えない
では、家の中ではどうでしょうか。
家もある意味、「大きな水筒」です。
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外:外壁・屋根(雨や風、外気温から守る)
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中:暮らしの空気(家族の体感温度・健康)
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間:断熱材・空気層・気密層
● 壁の中は「断熱材+空気層+気密」というチーム戦
たとえば、ビオハウジングの家では、
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セルロースファイバー(新聞紙由来の断熱材)や
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外側のEPS断熱、
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中の気密シートや面材などを組み合わせて、
「熱が逃げにくい」「空気環境が安定しやすい」構成をつくっています。
ここで大事なのが、
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断熱材がすき間なく入っているか
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断熱材がつぶされていないか
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気密層(空気をコントロールする膜)が途切れていないか
という、“見えない部分の丁寧さ”です。
水筒でいうと、
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真空層がちゃんと真空のままか
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内側と外側が余計なところでくっついていないか
というのと同じです。
3. 家の「落とした」瞬間は、工事中とリフォーム中に起きやすい
水筒は落とした瞬間に性能が落ちます。
家の場合、その「落とした瞬間」は、工事のときやリフォームのときに起きやすいです。
● よくある「見えないダメージ」の例
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配線を通すために、気密シートに穴を開けたまま
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→ 一見小さな穴でも、積み重なるとすき間風の原因に
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天井裏に荷物を詰め込み、断熱材がギュッとつぶれている
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→ つぶれた部分は断熱性能が半分以下になることも
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窓まわりの断熱が不足し、そこだけ“寒い帯”ができる
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→ 結露→カビ→アレルギーや空気環境の悪化につながりやすい
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増築・リフォームで、古い部分と新しい部分の断熱ラインがズレる
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→ その境目が、一番寒く・暑くなりやすい
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どれも、外から見るとわかりません。
でも、暮らしていると、
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「この角だけいつも冷たい」
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「窓際だけヒヤッとする」
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「リビングはあったかいのに、廊下に出た瞬間に寒い」
といった**体感温度の“ムラ”**として現れてきます。
4. 嵐の日に分かる「断熱」と「気密」の違い
ご相談の中でよくあるのが、
「晴れの日はそこまででもないけど、
風が強い日・嵐の日は一気に寒くなるんです」
というお声です。
● 風が強い日は、家が“実力テスト”されている
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外の風が強い
→ 外壁やサッシのすき間に圧力がかかる -
すき間が多い家
→ 冷たい空気が押し込まれやすい
→ 暖房の熱が外に“吸い出される”
これは、水筒でいうと、
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真空が抜けて、
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空気が入り込んでしまい、
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外側の冷たい空気と中身が“直接やり合っている”状態
に近いです。
● 「断熱性能がいいはずなのに寒い」家の正体
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断熱材の厚さやUa値は良い
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でも、気密性能(C値)が弱い
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その結果、
→ 嵐の日は、冷たい空気が出入りし放題
→ 室温はそこそこでも、体感温度が下がる
福岡・北九州のように、冬は風が強く、湿度も高めの地域では、
「断熱」と同じくらい「気密」が大事になってきます。
5. 自然素材の家でも「中身」が大事——外観だけでは決まらない
ビオハウジングでは、
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無垢材(むくざい)の床
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漆喰(しっくい)の塗り壁
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天然木を使った造作家具
など、自然素材の家づくりを大切にしています。
ただ、ここも水筒と同じで、
「見える部分だけ自然素材」では、健康住宅にはなりきれません。
● 自然素材+断熱+気密+空気環境で、やっと“器”になる
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自然素材
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足裏がじんわり温かい無垢材
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ほのかに湿度を調整してくれる漆喰
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断熱性能
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壁・屋根・床に、適切な厚みと種類の断熱材
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セルロースファイバーのように、隙間なく充填できる素材
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気密性能
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すき間をできる限り減らし、空気の流れをコントロール
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空気環境
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24時間換気の設計
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カビ・ダニ・花粉・PM2.5を入りにくくする工夫
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これらがそろって、はじめて
「冬でも、廊下もトイレもヒヤッとしない」
「お風呂上がりにブルッとしない(ヒートショック対策)」
「朝起きたとき、のどや肌がカラカラになりにくい」
という、“暮らしの体感”につながっていきます。
6. 「落としてしまった水筒」状態の家にならないために
最後に、これから家づくりをされる方、
すでにお住まいの方へのチェックポイントをまとめます。
● 新築・注文住宅のときに意識したいこと
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設計段階で
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「断熱ライン」と「気密ライン」が途切れないかを確認
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施工段階で
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断熱材の充填の仕方(つぶれていないか、スキマがないか)
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コンセントボックスや配管まわりの気密処理
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仕様選びで
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窓は**断熱サッシ(樹脂・トリプルガラスなど)**を優先
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床材や内装は無垢材や漆喰など、体感温度を上げてくれる素材を
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福岡・北九州の気候では、
「そこそこ」ではなく、一段上の断熱・気密性能が、
長く快適な健康住宅につながります。
● すでに建っている家でできること
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まずは**「どこが一番寒いか」**を家族でシェアしてみる
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窓際? 北側の部屋? 階段?
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窓まわりは
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カーテンや内窓の追加で、手軽に改善できることも多いです
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ヒートショックが心配な場合
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脱衣室やトイレだけ、小さな暖房を入れる
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ただし換気と安全性は必ずセットで検討
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そして、
「この家、自分の水筒みたいにどこか落としてしまってないかな?」
と、一度プロに見てもらうのも一つの方法です。
ビオハウジングでも、断熱性能や空気環境のご相談を、福岡・北九州エリアで随時お受けしています。
7. おわりに——性能の話は、暮らしの“ぬくもり”の話
真空の水筒を落として、
「お茶がすぐぬるくなるようになった」
それ自体は、ちょっとした不便さですが、
家で同じことが起きると、
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光熱費がかさむ
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体感温度が不安定
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カビ・結露・アレルギーのリスク
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ヒートショックの心配
など、暮らしと健康に直結します。
だからこそ、断熱性能・気密性能の話は、
**「スペックの自慢」ではなく、「家族のぬくもりを守る話」**だと思っています。
もし、
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「うちの家、嵐の日だけ妙に寒い」
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「リビングと廊下の温度差がつらい」
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「次に家を建てるなら、性能もちゃんと考えたい」
そんな想いがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
一緒に、“落としていない水筒”のような、
ずっとあったかい器としての家を考えていきましょう。
FAQ
Q1. 真空水筒を落としたら、もう元の断熱性能には戻りませんか?
A1. 多くの場合、真空層が壊れたり、内筒と外筒が接触してしまうと元には戻りません。外から修理することも難しいので、「前より明らかにぬるくなる」ようであれば、買い替えを検討した方が安全です。
Q2. 家の断熱性能が落ちているかどうかは、どうやって分かりますか?
A2. 一番わかりやすいのは「体感」です。特定の場所だけ極端に寒い・暑い、嵐の日だけ急に寒くなる、窓や北側の壁だけ結露しやすい…といった症状があれば、断熱や気密のどこかに“見えない傷”がある可能性があります。サーモカメラや気密測定で、より詳しく診断することもできます。
Q3. リフォームで断熱と気密をやり直すことはできますか?
A3. はい、可能です。ただし「どこに手を入れるか」で効果も費用も大きく変わります。窓だけを高性能サッシに変える、天井断熱を強化する、内窓を追加する、など段階的な改善もできますので、福岡・北九州の気候やご家族の暮らし方に合わせて、優先順位を一緒に考えていくのがおすすめです。