日本海側の家づくり 南側の窓ガラスは「遮熱型」か「日射取得型」か——暖房費と冷房費から考えてみる
こんにちは、福岡のビオハウジング
健康オタクの住宅設計士、竹森哲也です。
お客さまからよく聞かれる質問のひとつに、
「日本海側って冬あんまり晴れないから、
南側の窓も遮熱ガラスにして”夏優先”で考えたほうがいいんじゃないですか?」
というものがあります。
たしかに、北九州を含む日本海側は冬はどんより曇り空の日が多く、「日射取得なんて言うけど、そもそも太陽が出ないじゃないか」という感覚、すごくよく分かります。
今日はここを、
- 日本海側の「冬の日射」と「夏の暑さ」
- 暖房費と冷房費の”重さ”の違い
- 南側の窓ガラスの、現実的な選び方
という3つの視点から、整理してみます。

少ない冬の日射でも、南側の窓は「タダの暖房器具」になってくれます。
1. 日本海側の冬、「日射が少ないから遮熱優先?」と思いがちだけど…
まず、日本海側の冬の特徴をざっくり整理すると、
- 曇り・雪が多く、太平洋側より日射時間が短い
- 気温は低めで、暖房をつける期間が長い
- 体感としては「一日中、じわじわ冷える」
という環境です。
この感覚だけで考えると、
「どうせ冬はあまり日が差さないなら、南側も遮熱ガラスにして夏の暑さを優先的に対策した方が得では?」
と思いたくなります。
でも実は、「冬の日射が少ない=冬の日射は捨てていい」というわけではないんです。
少ないからこそ「晴れた日」を最大限活かしたい
- 曇りの日でも、空全体から入ってくる**”拡散した光と熱”**はあります
- そして、たまに出る晴れ間には → 南側の窓から一気にポカポカの熱が入る
ここで遮熱ガラスにしてしまうと、
- 貴重な晴れの日の熱までカットしてしまう
- 結果として「冬の暖房費」は確実に増える
「日射が少ないからこそ、ある分はちゃんと取りに行った方がトータルでは得」
ここが、日本海側での南側窓の考え方のポイントになります。
2. 暖房費と冷房費、どちらが家計に重いか?
ガラスの性能だけを見ていると迷路に入るので、一度**「お金」の視点**でシンプルに整理してみます。
全国平均で見ると「暖房>>冷房」
日本の家庭のエネルギー消費をざっくり見ると、
暖房に使うエネルギーは、冷房の何倍も大きい
(地域差はありますが、イメージとしては7〜10倍くらい)
さらに、同じエアコンを使っても、
- 冷房運転より
- 暖房運転の方が
→ 消費電力は大きくなりがち
理由は、
- 外が寒いほど、暖房の効率が落ちる
- 霜取り運転などで、さらに電気を使う
つまり、同じ1kWhの熱でも、「暖かさをつくる」方が「涼しさをつくる」より電気代が重くなりやすいという構造があります。
日本海側は「まだまだ暖房支配」の世界
日本海側・寒冷寄りの地域では、
- 冬の期間が長い
- 室温を18〜22℃に保つための暖房エネルギーが大きい
- 冷房期間は年々伸びているとはいえ、トータルではまだ**「暖房の方が圧倒的に重い」**
というのが現状です。
だからこそ、
暖房側の負担を減らす工夫のほうが、冷房側を少し楽にするより家計に与えるインパクトが大きい
という前提を、一度押さえておくと判断しやすくなります。
3. 南側の窓は「冬の暖房器具」になれる
ここで、南側の窓の”本来の役割”を思い出してみます。
日射取得型ガラスの南窓は「静かな暖房機」
冬の日中、太陽高度が低くなると、南側の窓からは
- 直射日射が床や壁に当たって、
- そこがゆっくり温まり
- その熱がじんわり室内に広がります
高断熱・高気密の家であればあるほど、
- 一度入った熱が逃げにくい
- 窓まわりの表面温度も上がるので、放射温度の”ヒヤッと感”も減る
つまり、南側の窓は
「ただの明かり取り」ではなく、”エネルギー代のかからない暖房器具”
の役割を持っています。
遮熱ガラスにすると何が起きるか
同じ南側でも、遮熱型ガラスにすると、
冬:
- 貴重な日射熱が入りにくくなる
- 結果として暖房エネルギーが増える
夏:
- 直射日射がカットされるので、冷房エネルギーは減る
ここで、さきほどの「暖房費>冷房費」の前提を重ねると、
暖房支配(日本海側・寒冷地)の地域では
→ 暖房費の増加の方が、冷房費の減少より大きくなりやすい
将来、冷房支配に近づきそうな都市の一部では
→ 条件次第で、遮熱寄りもアリ
という見え方になってきます。
4. 日本海側での「南側ガラス」の基本戦略
ここまでを踏まえて、日本海側寄りの気候(北九州を含む)で、現実的におすすめしやすいバランスをまとめると——
① 南面:日射取得型〜中庸+「外側で遮る」工夫
ガラス性能
- U値が低い(日射取得〜中庸タイプのLow-E複層ガラス)
- 日射熱取得率η(g値)は、やや高め〜中くらいを選ぶ
夏の対策は
- 軒・庇で夏至の高い太陽を切る
- 外付けブラインド・簾(すだれ)・シェードで「ガラスの外側で」日射を止める
- 必要に応じて落葉樹の植栽で夏だけ影をつくる
→ ガラス自体は**「冬の味方(日射)を残す」**設定にしておき、夏は建築側の工夫で”引き算”するイメージです。
② 南西・西面:遮熱型+開口を控えめに
夏に本当にキツいのは、→ 低い角度から差し込む南西〜西日の直射
ここは割り切って、
- ガラス:遮熱型
- 窓サイズ:必要最低限に絞る
- 可能であれば、こちらも外付けの遮蔽をセットで
→ 「夏の敵」は、主に西側で倒すイメージです。
③ 北・東面:断熱重視で「ひんやり感」を抑える
- 北面は直射日射がほぼないので、→ U値重視(断熱性能重視)
- 東面は朝日で部屋を明るくする役割が多いので、→ こちらも断熱寄り+窓サイズのコントロール
5. 北九州・福岡あたりで考える「ちょうどいいバランス」
北九州は、
- 地図で見ると日本海側寄り
- 体感としては「そこそこ寒い+湿気が多い」エリア
です。
このエリアで南側窓のガラス選びを考えるなら、僕自身はこんな整理をよくお話しします。
● 基本:南面は「日射取得寄り〜中庸」
HEAT20のG2前後の性能を目指す家であれば、→ 南面は日射取得寄りをベースに
ただし、
- 2階の南側に超大開口をドンと取る
- 都市部で周りに遮るものがなく日射が入りすぎる
といった条件のときは、→ 中庸寄り+しっかりした庇+外付け遮蔽でバランスをとる
● 暖房費と冷房費をセットで見る
北九州でも現時点では → まだ暖房費の方が冷房費より大きいケースが多い
なので、
南面窓を全部遮熱に振って「夏だけ」楽にするより、
冬の味方(日射)を活かしつつ、夏を”外側の工夫”で調整する方が、
→ ランニングコストと体感の両方でバランスが良い
というのが、今のところの結論です。
6. まとめ:数字と体感、両方で決めると失敗しにくい
ここまでを、暮らし目線で言い換えると——
日本海側はたしかに「冬は暗くて寒い」
だからこそ、**わずかな晴れ間でも”しっかり部屋を温めてくれる南窓”**は、実はとても頼もしい存在。
暖房と冷房を比べると、 → まだまだ暖房の方が家計へのパンチが強い
だから、
- 南側は「冬の味方」を優先
- 夏の暑さは「庇・外付け遮蔽・植栽・通風」でカバー
- 本当にキツい西日は、遮熱ガラス+窓サイズ調整で対処
という方位ごとの役割分担が、いちばん現実的です。
「うちの土地と暮らし方だと、どこまで日射取得寄りに振れるかな?」
そんな相談も、図面や光の入り方を見ながら一緒に組み立てていきますので、気になる方はいつでも聞いてくださいね。
FAQ
Q1. 日本海側の冬は曇りが多いのに、本当に日射取得型ガラスにする価値はありますか?
A. 日射時間は少ないですが、ゼロではありません。曇りの日も拡散した光と熱は入りますし、たまの晴れ間には南窓が“タダの暖房器具”として大きく働きます。暖房費の方が冷房費より重い地域では、このメリットを捨ててしまうのはもったいないと考えています。
Q2. 夏の暑さが心配なので、やっぱり全部遮熱型ガラスにした方が安全では?
A. 「全部遮熱」にすると、たしかに夏は少し楽になりますが、その分冬の日射熱までカットしてしまい、暖房費が増えます。日本海側ではまだ暖房の方が家計に重くのしかかるので、南面は日射取得寄りにしつつ、夏は庇や外付け遮蔽で外側から日射をカットする方が、トータルではバランスが良いことが多いです。
Q3. 北九州・福岡の場合、南側はどの程度の日射取得型が適切ですか?
A. HEAT20 G2前後の性能を想定すると、南面は日射取得寄り〜中庸くらいが現実的な落としどころです。2階の大開口などオーバーヒートが心配な場所だけ、少し遮熱寄りにしつつ、しっかりした庇や外付けシェードを組み合わせるのがおすすめです。