子どもが家で落ち着かない本当の理由
こんにちは、福岡のビオハウジング
健康オタクの住宅設計士 竹森哲也です。
「うちの子、家だとソワソワして全然落ち着かないんです…」
そんなご相談を、よくいただきます。
性格や育て方の前に、
一度だけ立ち止まって見てほしいのが、**「部屋の空気」と「化学物質」**です。
子どもが家で落ち着かない本当の理由
目に見えない「部屋の化学物質」とのつきあい方
子どもが落ち着かないのは「性格」だけの問題じゃない

・ちょっとしたことでイライラして泣く
・宿題に全然集中できない
・家の中だと兄弟ゲンカがやたら増える
こういうとき、
「うちの子は落ち着きがない」「育て方が悪いのかな」と思いがちですが、
部屋の空気の中にある「化学物質」が、子どもの身体をざわつかせている
という可能性も、実はかなりあります。
子どもは大人よりも
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身体が小さい
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呼吸の回数が多い
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解毒する肝臓・腎臓がまだ未熟
なので、同じ空気を吸っていても負担が大きくなりやすいのです。
見えない刺激――部屋のどこから化学物質が出ている?
建材・内装材から出るもの
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合板フローリング
→ 接着剤にホルムアルデヒドなどのVOC(揮発性有機化合物) -
ビニールクロス(壁紙)
→ 可塑剤・防カビ剤・溶剤 -
カラーボックスや組み立て家具(MDF・パーティクルボード)
→ 接着剤由来のVOC
新築やリフォーム直後だけでなく、
何年もじわじわと放散し続けるタイプのものもあります。
家具・寝具・カーテンなどのファブリック
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ソファやマットレスのウレタンフォーム
→ 発泡剤の残り・難燃剤 -
合成繊維のカーテン・ラグ
→ 防炎加工・防汚加工など -
「防ダニ」「抗菌」などの機能付き寝具
「便利」「安心」に見える機能ほど、
“ずっと少しずつ出続ける”化学物質が仕込まれていることが多いのがやっかいなところです。
洗剤・柔軟剤・芳香剤・消臭スプレー
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香りの強い柔軟剤・洗剤
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リビングやトイレの置き型芳香剤
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カーテンやソファに使う消臭・除菌スプレー
これらは
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香料そのもの
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香料を飛ばすための溶剤(アルコールなど)
が空気中にただよい、
部屋全体を「香りのついた化学物質のミスト」で満たしてしまうことがあります。
防虫・防カビ・防臭グッズ
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クローゼットの防虫剤
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下駄箱や押入れ用の防カビ・消臭剤
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室内で使う殺虫スプレー
「虫やカビが嫌がるもの」は、
人間の身体にとっても“うれしいもの”ではないと考えたほうが自然です。
子どもの身体の中で何が起きているのか
小さな身体は「同じ空気でも」負担が大きい
子どもは大人のミニチュア版ではなく、
**大人よりも“空気の影響を受けやすい存在”**です。
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体重あたりの呼吸量が多い
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代謝が早い
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解毒や排出の仕組みが未成熟
そのため、同じ環境にいても
大人「ちょっと頭が重い気がするけど、まあ平気」
子ども「落ち着かない・イライラする・集中できない」
となりやすいのです。
自律神経がざわつくと、行動もざわつく
一部の化学物質や強い香りは、
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交感神経(戦う・逃げるモード)
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副交感神経(休む・消化するモード)
のバランスを乱しやすいと考えられています。
その結果として、
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なんとなく落ち着かない
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攻撃的になる
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集中が続かない
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寝つきが悪い、眠りが浅い
といった**「行動の変化」**として表に出てきます。
ホルモンや免疫の乱れとして出ることも
可塑剤や難燃剤などの中には、
ホルモンバランス(内分泌)への影響が懸念されているものもあります。
また、
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皮膚のかゆみ・湿疹
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鼻づまり・咳
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頭痛・吐き気・だるさ
といった、アレルギーや過敏症に近い反応として
サインが出る子どももいます。
今の家でできる「化学物質を減らす」4つのステップ
リフォームしなくても、
今日からできることがたくさんあります。
ステップ1:まず“足す前に、引く”
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強い香りの柔軟剤・芳香剤をいったんやめてみる
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「使い切ってから」ではなく、一度封印して反応を見てみる
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消臭スプレーをやめて、
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洗う・干す・捨てる で「においの原因」に向き合う
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防虫・防カビグッズを、
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「あるのが当たり前」から「本当に必要なところだけ」に
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部屋の空気は、「何を足すか」より
「何を減らすか」で、ガラッと変わります。
ステップ2:換気の“回数と質”を見直す
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「たまに気が向いたら窓を開ける」ではなく
→ 1日2〜3回、5〜10分など“回数と時間”を決める -
できれば2方向の窓を開けて、空気の通り道をつくる
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換気扇は調理中だけでなく
→ 朝や夜にも回して、溜まった空気を押し出すイメージで
家の中にたまっている化学物質を
外に「流す」習慣づくりが大切です。
ステップ3:子どもの“滞在時間が長い場所”から整える
子どもが一番長くいるのは、
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ベッド周り(睡眠)
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リビングの定位置(勉強・遊び)
なので、まずこの2つを重点的に。
ベッド周り
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枕元の芳香剤・アロマディフューザーをやめてみる
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ぬいぐるみが大量にある場合は、数をしぼる
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防虫剤を枕元の近くに置かない
勉強コーナー
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机の周りに、香り付きのグッズやスプレー類を置かない
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すぐ横に洗濯物(柔軟剤の香り)が干してある…などを避ける
目安は、
**「寝る場所・勉強する場所は、できるだけ“無臭に近づける”」**ことです。
ステップ4:新しく買うときの基準を変える
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家具
→ 無垢材・自然塗料・低VOC(F☆☆☆☆)のものを優先 -
カーテン・シーツ
→ 綿やリネン(麻)などの自然素材で、加工の少ないもの -
洗剤・石けん
→ 「香り控えめ」「無香料」のシリーズを一度試してみる
完璧を目指す必要はありません。
**「肌や呼吸に近いものから、少しずつ」**シフトしていくだけでも、
空気は着実に変わっていきます。
家づくり・リフォームで意識したいポイント(専門家として)
ここからは、設計・施工側の視点も少し。
「低VOC仕様」はスタートラインにすぎない
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内装材・接着剤・塗料の**F☆☆☆☆**は、今や最低ライン
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それに加えて
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無垢材の床
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塗り壁(漆喰・珪藻土など)
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自然系塗料
などで、そもそも「出てくるもの」を減らす設計が大切です。
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“いい匂いのモデルハウス”は、少し疑ってみる
見学に行ったときに、
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入った瞬間に強い香りがする
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アロマや消臭剤で「におい」を演出している
そんな家は、
本来の空気をごまかしている可能性もあります。
本当に空気がいい家は、
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匂いの主張が少ないのに
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鼻や喉がラクで
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2〜3歩入っただけで、ふっと肩の力が抜ける
そんな「無香」の心地よさがあります。
家づくりの優先順位を「子どもの身体」に合わせる
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「おしゃれ」「流行り」よりも
→ **“子どもの身体にとって負担が少ない順”**で決めていく -
メーカーのカタログだけでなく
→ 実物サンプルを家に持ち帰り、「におい」「触れた感じ」を家族で確かめる
家づくりは、性能やデザイン以上に、
そこで育つ「いのちの環境」を整える行為だと感じています。
チェックリスト:子どもが落ち着く「空気の部屋」に近づけるために
今の暮らしで、見直してみたいポイント
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部屋に芳香剤・消臭スプレーを常備していないか
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香りの強い柔軟剤や洗剤を日常的に使っていないか
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子どものベッド周りに、防虫剤や香り付きグッズが集中していないか
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窓を「毎日決まった回数」きちんと開けているか
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新しい家具・マットレスを入れた後、しっかり換気したか
家づくり・リフォームをするときに
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内装材・床材・建具は「低VOC+できれば自然素材」を選んだか
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モデルハウスの“匂い”ではなく、“身体の感覚”で空気を確かめたか
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子どもが長くいる場所の素材・位置関係を優先して設計しているか
おわりに――「いい匂いの家」より「何も匂わない家」へ
子どもが家で落ち着かないとき、
私たちはつい「しつけ」や「性格」へと原因を探しがちです。
でも、まずは一度、
部屋の空気と化学物質とのつきあい方を見直してみませんか。
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香りを足すより、余計なものを減らす
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デザインより、からだの声を優先する
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「いい匂いの家」より、「何も匂わない家」を目指してみる
それだけでも、
子どもの表情がふっと柔らかくなる瞬間が、きっと増えていきます。
ビオハウジングでは、
こうした「からだが落ち着く空気づくり」を前提にした家づくりを、
設計と素材選びの両方からお手伝いしています。
気になる方は、今の暮らしのご様子から、気軽にご相談くださいね。
Q1. どんな様子があれば「部屋の化学物質」を疑ったほうがいいですか?
A. 家にいるときだけ、頭痛・だるさ・イライラ・鼻づまり・咳・肌のかゆみなどが出る場合は、一度「部屋の空気」を疑ってみてもよいサインです。とくに、新しい家具やマットレス、洗剤・柔軟剤・芳香剤を変えたタイミングと重なる場合は、関連性をチェックしてみてください。
Q2. 賃貸でもできる対策はありますか?
A. あります。建材そのものは変えられなくても、
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強い香りの柔軟剤や芳香剤をやめる
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換気の回数を増やす
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カーテンや寝具を綿・リネンなど自然素材に変える
といった工夫で、空気の質はかなり改善できます。まずは「足す」より「減らす」対策から始めてみてください。