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TOP性能ブログ人間の身体は、悲しいほど寒さに弱い

人間の身体は、悲しいほど寒さに弱い

ああ悲しきアフリカ起源の身体

― なぜ人は寒さに弱く、家の暖かさを求めるのか ―

こんにちは、福岡のビオハウジング 健康オタクの住宅設計士、竹森哲也です。

冬になると、「家の中が寒いのは当たり前」と思っていませんか?

少し前まで、日本の住宅業界でもそう教えられていました。

吉田兼好が『徒然草』で

「家のつくりやうは、夏を旨とすべし。冬はいかなる所にも住まる」

と記したのは、鎌倉時代のこと。

風が抜ける“夏旨”の家こそが正しい。冬の寒さは我慢すればいい。

この考えはなんと、ほんの十数年前まで住宅業界の常識だったのです。


しかし、時代は変わりました。

「寒さは健康に悪い」という新常識が広まり、

ヒートショックや入浴中の事故、心筋梗塞や脳卒中の増加が問題になりました。

国土交通省の調査でも、断熱改修によって室温が上がると

血圧が安定し、睡眠や免疫の質まで向上することが明らかに。

今や「家の中を18℃以上に保つこと」は健康維持の条件になっています。


🌍 それでも、人間の身体は“アフリカ仕様”のまま

人類は数百万年ものあいだ、アフリカの高温乾燥地で暮らしてきました。

暑さを乗り越えるために、汗をかいて熱を逃がす――

そんな「放熱上手」な体へと進化してきたのです。

木の上で暮らしていたご先祖がサバンナへ下り、

二足歩行によって風を受けやすい体型を手に入れ、

体毛を減らして汗腺を増やしました。

つまり、私たち人間の体は

「冷却性能」に全振りした“冷房動物” なのです。


❄ 寒さに弱いのは、進化の“副作用”

熱を逃がしやすい手足、体毛の少ない皮膚。

これらは夏には有利ですが、冬には不利です。

寒くなると体は震えて代謝熱を増やそうとしますが、

放熱のスピードが速すぎて追いつかない。

細い手足からどんどん熱が逃げ、鳥肌を立てても意味がありません。

ああ悲しきアフリカ起源の身体。

我々の体には、冬の暖房が不可欠なのです。


🔥 暖房は“ぜいたく”ではなく“生理的必需品”

かつての日本の家は「夏旨」の思想のまま、

すき間風だらけの冬を当たり前としてきました。

しかしそれは、私たちの体の仕組みに逆らう環境です。

断熱や気密は、「省エネ」のためだけではなく、

アフリカ仕様の身体を日本の冬で守るための生理的装置。

健康を支える“住の衣服”といえます。


🌿 これからの家づくり ― 「夏旨 × 冬快」へ

吉田兼好が語った「夏を旨とすべし」は、

通風や日陰を大切にする“自然と呼吸する家”の知恵。

それを現代の技術で活かし、

冬でも家中が18℃を下回らない、

でも“風と光”がちゃんと通う家。

――それが、ビオハウジングの目指す「醗酵する家」です。

自然と響き合いながら、

身体も心も微生物も“ちょうどよく”生きられる空気。

そこにこそ、現代の“夏旨×冬快”の家づくりがあると思うのです。

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