CONCEPT
私たちビオハウジングは、ずっと問い続けてきました。
「本当に、人が心から安らげる家とは何だろう?」
無垢の木、漆喰、和紙――
自然素材のもつやさしさと力強さを信じ、高い断熱性能、確かな耐震性を追求してきました。
けれど、ある日ふと気づいたのです。
自然素材だけでは、人の呼吸や心の調子までは支えきれない。本当に整えるべきは、“空気そのもの”。
そして、その空気のなかに静かに生きる、微生物たちの存在でした。
この気づきの背景には、私自身の体験があります。
建築の仕事に携わるなかで、日々当たり前に触れていた建材。
それらに囲まれたある現場で、突然、体が重くなり、息がしにくくなったのです。
頭痛、倦怠感、肌荒れ――
病院をまわっても原因はわからず、たどりついた診断は「化学物質過敏症」でした。
それは、“住まいという空間”が人の身体に与える影響の大きさを、私に教えてくれた出来事でした。
症状が軽くなる場所を求めてたどり着いたのは、古く、けれど静かに呼吸するような、無垢材の家。
ビニールのにおいもなく、人工的な刺激もない。ただ静かに、空気が澄んでいる。
その空間に身を置いた瞬間、私ははじめて実感したのです。
**「建材ではなく、“空間そのもの”が、私を癒している」**と。
そこから私は、食のあり方にも向き合いはじめました。
マクロビオティック、ローフード、スプラウト料理――
微生物の力を活かした食を実践し、天然酵母でパンを焼き、味噌を仕込む。
すると、少しずつ、身体の内側から整っていく感覚が生まれたのです。
微生物と共にある住まいへ。
私たちは普段、空気をただの「気体」だと思っています。けれどその空気のなかには、目には見えない命――
微生物が静かに息づいています。
発酵する味噌や漬物のように、空気もまた、“育まれる”ものではないだろうか。
そう考えた私は、住まいを「発酵の場」として捉えるようになりました。
かつての日本の家では、麹を育て、味噌を仕込み、微生物とともに季節を過ごしていました。
家そのものが、命の循環をつなぐ“場”だったのです。
私たちは、その知恵を現代の建築に受け継ぎ、微生物が生きやすい空気環境を、設計として実現する道を選びました。
数字ではなく、感覚のための性能へ。
断熱性能はHEAT20 G2.5相当。構造はすべて許容応力度計算により耐震等級3を確保。一見、ハイスペックな住宅に見えるかもしれません。けれど、私たちにとってそれはあくまで**「楽になるための性能」**です。
冬でも床が冷たくならない部屋ごとの温度差が少なく、肌も乾かない音が静かで、空気がまるく、呼吸が深くなる
それはすべて、“身体の内なる環境”を整えることにつながっています。
今、私たちが目指しているのは、性能の高さや美しさを超えた、人の命の深いところと共鳴する建築です。
空気、食、身体。微生物、感覚、光、熱。それらすべてがひとつの環(わ)をなし、響き合う暮らし。
住まいとは、“建てるもの”ではなく、命を預ける“場”をつくることなのだと、私たちは信じています。
空気が育ち、感覚が還り、命が整う場所。
今日も私たちは、**“自分に還れる家”**を、一棟一棟、ていねいに設計しています。